追放された悪役社長令嬢 宝月麗華~SSSランク越えのポーションを飲み世界最強の探索者になってアイドル配信者を助けたら、アイドルに溺愛されて、万バズ配信者に成り上がりましたわ~

さくらとさちほ

1章 悪役社長令嬢、探索者になる

1-1 社長追放される 《麗華1人称》

「決議の結果、宝月ほうげつ麗華氏を代表取締役から解任いたします!」




 この瞬間、わたくし宝月麗華は自分の会社から追放されてしまった。




「はっはっは、チョーメイ製薬の株価がやっと上がるぞ!」

「30もいかない小娘に社長業は無理だったんだ!」

「遊び半分で経営ができるわけねーだろ、馬鹿女!」

「顔だけはいいから、パパ活でもやったら成功するかもな!」


 沸き起こる拍手と下品なヤジ。

 上場企業の株主総会とは思えぬばかりの馬鹿騒ぎ。

 わたくしはこんな人たちを必死で守ろうとしていましたの……!



 わたくしは国内大手製薬会社の社長令嬢だった。

 しかし父母が事故で急死。わたくしが社長に就任することに。


 お父様は会社を我が子以上に大切にしていた。

『製薬会社は命を預かる企業。社長である自分の肩には、大勢のお客様、株主、従業員、取引先の命がかかっている』

 それがお父様の口癖だった。


 そんなお父様の遺志を継ぎ、わたくしは必死で社長業を務めてきた。寝る暇もないスケジュールをこなし、支援者や新たな市場を求めて世界中を飛び回った。やりたいことも我慢。会社のためだけに、この数年間を捧げてきた。


 それなのに……。



 あふれる想いを何とかこらえていると、ひときわ大きな声のヤジが飛んできた。






「【悪役社長令嬢】は追放だ!」






【悪役社長令嬢】


 陰で社員たちにそう呼ばれているのは知っている。

 根回し軽視のワンマン経営。大規模で強引なリストラ。

 さぞかし憎らしく思われたでしょうね。まるで漫画の悪役のように。


 でも、それは弱肉強食の製薬業界で生き残るため。

 会社を守るためなら悪役にだってなってやる。

 そう覚悟を決めて、わたくしは悪役を演じていた。


【悪役社長令嬢】――それはわたくしの誇り。

 涙なんて流さない。

 最後まで、悪役社長令嬢を演じきってやりますわ!




 その後、新たな社長が任命された。


「この度社長に就任いたしました、宝月能成よしなりでございます」


 こいつはわたくしの叔父で、外資系ファンドと結託してわたくしを追い出した張本人。採算を考えずリスクの高い事業に投資ばかり行う無能オブ無能。


わたくしが社長に就いたからには、会社の体力を奪うリストラは即刻中止。積極的な事業展開により新たなバリューを創造し、サステナブルな成長をコミットいたします!」


 拍手拍手の嵐。

 中身のない言葉で熱狂させるなんて、たいした千両役者じゃない。いや、詐欺師か。


 拍手が収まったタイミングを見計らって発言する。


「おーーっほっほっほー。実に面白い喜劇ですこと! あの能成ノーナシ叔父様を、会社を救う有能社長ニューヒーローと勘違いするなんて!」


「ノーナシではありません、能成よしなりです」


「もちろん存じ上げておりますの。でも、能が無いものも事実じゃなくて」


「何を言っても、しょせんは悪役の負け惜しみ。あなたは社長室から追放されたのですから、もう実権はありませんよ」


「そんなものは要りませんわ。わたくし、やりたいことがございますので」


「やりたいこと?」






「わたくし、ダンジョン探索者になりますわ!」






 五年前、日本の首都に突如【ダンジョン】が出現した。

 ダンジョンに潜れば、超科学アイテム【オーパーツ】を入手できる。

 オーパーツは大金で売れる。

 そのため、多くの人々がダンジョンに潜るようになった。

 ダンジョンに潜る人たちは【探索者】と呼ばれている。



「【ダンジョン配信】をして、多くの人たちを楽しませてさしあげますわよ!」



【ダンジョン配信】とはその名の通りダンジョンで動画配信を行うことだ。

 某有名アイドルが始めたことで火がついた。

 今や動画配信の一大ジャンルだ。


 お金と承認欲求を満たせる探索者をやってみたい。

 叶うはずがない夢が、まさかこんな形で叶うなんて!



 静まり返る聴衆。


 無理もないわね。探索者になるなんて、命を捨てると言っているようなものだし。

 ノーナシ叔父様なんて、わらいたいのを必死でこらえているのか、顔が引きつっていますもの。

 そんな凡人たちの反応を見るのも、気分がよろしくてよ。


「ごめんあそばせ。さ、総会を再開してくださる」






 株主総会終了後、帰宅。


「これも用済みね」


 名刺を全てゴミ箱に捨てる。

 そして、大きなベッドの上で寝ころんだ。


「わたくし、もう社長じゃありませんのね……」


 力が抜けていくのを感じる。


「でも、悪い気はしませんの」


 今まで、力が入りすぎていたのかもしれませんわね。

 これからは自分のために生きて行けばいい。



「感傷に浸っている暇なんてありませんわ」


 ベッドから起き上がり、乱れた髪を整える。


「まずは探索者について、もっと調べないと!」


 ダンジョンは究極の実力社会。

 死なないようにするのも一苦労。

 成功をつかむのなら、なおさらだ。

 1秒も無駄にできない。


 ノートパソコンを起動。

 電源を押すと同時に、たぎる情熱がわたくしの中を駆け巡る。


「さぁ、楽しくなってきましたわーー!!」



 舞台は変わっても、悪役社長令嬢「宝月麗華」の活躍は止まらない。


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3話で主人公が大暴れします。

ぜひぜひ読みにきてくださいね♪

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