ファンタジーエロゲのモブに転生しましたが、このままだとイベントで命を落とすので、強くなってトゥルーエンドがバットエンドの運命を回避したいと思います。

月見ひろっさん

第1話 序章


  「ようやく、ようやく買えたよ! 復刻版ヴァルキリー!」


 とても大事そうにゲームソフトを胸に抱え、男は帰宅の途についた。


 今日はエロゲー「堕ちた戦乙女」の復刻版の発売日、その昔、紳士たちの間で流行ったそれは、今は入手困難なゲームソフトだった。


 その復刻版という事で、開店と同時に店に入り、購入。喜びに打ち震えていた。


 男はこのゲームをやり込んでいた過去があるので、昔を懐かしんで手に入れたのだ。


 「堕ちた戦乙女」それは、ヒロイン凌辱モノのファンタジーADV。


 ヴァルキリーが魔物に捕まり、色々とエロエロな目に遭うストーリー。


 一本道のストーリーの最後は、人類が魔物に負けて混沌が支配する世界となり、女神やヴァルキリーが魔物に凌辱の限りを尽くされる、そんなお話。


 紳士によっては不興をかうモノだったが、それでもある程度の人気があったのだった。


 隠れた名作というヤツだ、だからこそ男はお店に直行したのだった。


 お店からの帰り道、男は近道しようと裏路地へ入ったところ、女性の悲鳴が聞こえたので、様子を見に行った結果、いかにも悪漢と思われる人物が女性を襲っていた。


 「やだなぁ、こんな場面に遭遇するなんて。」


 男はへたれだったが、勇気を振り絞り、悪漢に立ち向かった。


 「君! やめたまえ! 警察を呼ぶぞ!」


 女性と悪漢との間に割って入り、男は震えながら悪漢にモノ申した。


 「ふへへへ。」


 悪漢はどこか様子がおかしく、まともな人格をしていなさそうだった。


 目つきが泳ぎ、口元からよだれが垂れ、手にはナイフが握られていた。


 男が立ち塞がった隙に、女性はさっさと逃げ出して事なきを得た。


 「よかった、女の人は無事か。」


 逃げて行った女性を見送り、男はほっと肩を撫でおろす。


 だが次の瞬間、男の腹部に激痛が走り、足に力が入らずそのまま倒れてしまった。


 「いてええええっ!?」


 叫びと共に血しぶきが飛び、男はナイフで刺された事を理解した。


 意識が朦朧としてきた男は、女性がもう立ち去ったあとである事を理解し、諦める覚悟で悪漢の方を見やる。


 悪漢は地面に落ちたゲームソフトを踏み付け、走って道路に逃げていった。


 「これだけは、これだけは手元に………。」


 これで最後だと思い、仰向けになりながらも男は震える手でゲームソフトを掴む。


 踏みつけられた「堕ちた戦乙女」のゲームソフトを抱き寄せ、男はそのまま力尽きた。


 「ああ、俺の人生って………一体………。」


 男は意識が無くなり、ゆっくりと目を閉じたのだった。


 ゲームソフトを胸に抱きながら………………。




  


 



  

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