一話 暑いです!脳筋天使ちゃん☆

さて。脳筋天使ちゃんは、今日もこの仮想世界にやってきました。


バレたらそれはもう大変な事になるので町の中では必ず、認識阻害の効果が付与されている灰色のフードを被っています。


今日は何をするのかな?


いつもの様に、初級ダンジョンの巡回?それとも…あ。


どうやら今日は鍛錬をするようです。


……



日差しがとっても暑いですね。鎧姿なので特に暑そうです。それでも脳筋天使ちゃんはいつだって、極限状態の場所で鍛錬を行います。


今回選ばれたのは1級災害区域の『ホルス砂漠』


エネミーは強いけど経験値はすごく不味くて、環境効果で常に火炎による持続ダメージで体力が削れていく、滅多に誰かが来る事もない場所ですが、脳筋天使ちゃんにとっては最高の狩場です。


———!


フードをインベントリにしまって、鈍く輝く金棒を両手で持って構えます。汗がだらだら出てますが、カッコいいですね。


お。ホルス砂漠から早速、ボスエネミーである『巨大デスワーム』が!!当時、討伐しようがしまいが最終的に押し潰されて全滅したパーティはごまんといるこの凶悪エネミーを脳筋天使ちゃんはどうやって、ん?金棒を置いて…



ドオォォォン!!!!



あ。潰れた…違う。これは…その華奢な腕で持ち上げて……


——っ〜〜〜〜!!!



グシャグシャ…ベキベキィ……



へ、へし折っちゃった…こほん。汚い体液をぶちまけながら『巨大デスワーム』を討伐しました。もちろんアイテム回収は忘れません。



——っう。



おやおや。持続ダメージで体力がもう半分以下に。このままだと灰になるか、ミイラになっちゃいますね。ですが、そんな事で止まる脳筋天使ちゃんではありません。


ほら。早速エネミー…回復ポーション達を集めるアイテムを取り出しましたよ…持続時間がなんと3時間もある…


……えっと脳筋天使ちゃん?持続時間が低い奴もちゃんと持って来てますよね?



はぁ……はぁっ……



これは駄目ですね。暑さで正常な判断が出来ていないようです……あーあ。やっちゃった。


……



防御力が上がるからと鎧を律儀につけるからこうなるんですよ。皆様はちゃんと砂漠地帯に行く時は装備を砂漠仕様に一新することを強く推奨したします。



それでも、3時間…よく戦い抜きました。今日はこの辺で…


「…た、助けてぇぇぇ———!!!!」


————!?


あらら。脳筋天使ちゃん以外にここに来る物好きなプレイヤーがいるんですか。これは予想外の出来事ですが、まあ。助けにいきますよね。


……



「…あ、ありがとうございます!!!どうしてもホルス砂漠で手に入る素材が足りなくて…その、お名前は…」


「……」


沈黙。下手に素性を明かせば、大変な事になりかねませんから…妥当な判断ですね。


「……っ、待って下さい!!こ、これ…」


——!


タオル…プレイヤーの彼女。どうやら気遣ってくれてますよ脳筋天使ちゃん。元々さっきの戦闘で受けた体液とか汗でドロドロでしたしね。


……ありがとうございます。


「っ、いえそんな!…貴女が助けてくれなかったら、私は…」



ドサドサドサドサドサ…


やれやれ。これで3時間の努力は水の泡。ここが砂漠地帯だけに…乾燥してしまいましたか。


……



さて、脳筋天使ちゃんは今日は二級災害区域『灼熱瀑布』にやって来ています。


持続ダメージはホルス砂漠程じゃないですが、暑いものは暑いものですね。


……おや。


昨日の3時間分の素材を引き換えにして手に入れたその安価なタオル…ちゃんと使っているんですね。脳筋天使ちゃん。


                   続く

























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