がんばえ〜!脳筋天使ちゃん☆

蠱毒 暦

幕間 都市伝説 

——初級迷宮 第12層


エネミーも推奨難易度も低い筈だったのに。俺が途中で凡ミスなんてしたから…武装ゴブリンの大群に囲まれたんだ。


「く、くそ……だ、誰かぁ…」


既にパーティは壊滅状態。残ったのは、前衛の俺だけだった。


(で、デスペナが…っ。)


後でフレンド達に叱られる覚悟を決めて目を閉じた。ヒットポイント的にも戦うだけ無駄…


「……?」


いつまで経っても、止めを刺されずに…ゆっくりと薄目を開ける。


そこには——


「えっと…大丈夫ですか?あ…ごめんなさい!!別にあなた達から経験値を奪うつもりはなくて…今、手に入れたドロップ品を渡しますので、」


「………」



クリーム色の髪に、茶色いくるくる目。頭の上にある車輪のような髪飾り。


黒い金棒や元々白かったであろう鎧がゴブリンの体液に染まり左頬にも体液が付着して…


「…お前、まさか…あの、」


このVRMMO『ラスト・イクリプス』において

公式の上位ランキングで見た事がある。


トップ10に入れば、そのプレイスタイルや特徴から二つ名を与えられ、ゲーム内において特別な権限を与えられる。


彼女の別名は確か…



——脳筋天使



『ギルド潰し』や『クソ魔術師』とは違い、彼女については、情報が錯綜しすぎて不明瞭な部分が多い。それでも、分かっている事はある。



曰く。彼女は戦闘の最中、助けを求めるプレイヤーの前に突如として現れる。


曰く。彼女が攻撃するごとにパーティ全員のヒットポイントを回復させる。


曰く。彼女にはゲームにおける『助太刀権限』…噂では、強制的にパーティに加入出来る力を持っているらしい。


「…もういないか。」


——曰く。戦闘が終わればすぐにパーティから脱退して高価なアイテムを置いて、いつの間にか消えている。


そんなプレイスタイルだからか、実は運営が生み出したNPC説や、かつて起きた『AI事件』の亡霊説も存在する…正に生きる都市伝説の如き存在。


俺は彼女が置いて行ったアイテムを回収する。



「…これ、上級のアイテムもあるじゃん。マジでいたんだなぁ…天使って。」



その全てが本当であった事にステータス画面の履歴を見て呆れながら、俺はフレンドがいる町へ彼女が置いていった転移アイテムを使い、迷宮から離脱した。



(後で、アイツらにも自慢しよっと。)





















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