おもしろ会話トレーニング!

舟渡あさひ

僕をクビにしようとしたパーティーリーダーが自分から出ていった

「お前、クビな」

「えっ」


 Aランク冒険者パーティー『パナシャープス』のリーダー、アキラから告げられたのは無慈悲な宣告だった。


「どうして!? 確かに僕は斥候職だから戦闘には役立たないけど、邪魔もしてないし! 野営準備、予算管理、ダンジョンのマッピングに罠感知! 全部完璧にこなしてきたじゃないか! パーティーの和だって乱したことは一度も――」


「それだあああああああっ!」

「えっ」


「それ! それだよ!」

「ど、どれ? パーティーの人間関係の話?」


「そうだよ! お前、自分の名前言ってみろ!」

「名前……?」



「エアコン・Rリモコン・ドコイッタンだけど……」



「僕の役目は人間関係の空調役ですってかあああああ!?」

「ごめん何を言っているのかよくわからない」


「お前がなあ! リモコン失くしたせいでなあ!」

「リモコン? 失くした? なに??」


「空調効きすぎて、女子メンバーと親密になれないだろうがあああ!」

「うわ最低だ」


「空気を循環させ過ぎなんだよ! お陰でみんな平等に仲良しすぎて特別な関係になれねえだろうが!」

「えぇ……」


「たまには止まれよ! 電気代いくらかかると思ってんだよ!」

「本当になんの話なのこれ?」


「最初は助かるなぁなんて思ってたよ! そんなお前にあやかってこんなパーティー名にしたりもしたよ!」

「パーティー名の意味は秘密ってアキラが言うから、僕まだわかってないんだけど……」


「この裏切りもんがあああ!」

「そんなことを言われても……」


「というわけで、てめえはクビだ。邪魔者を排除し俺はこれからハーレムパートに移行する」

「パーティーリーダーの闇……っていうか無駄だと思うよ?」


「あ? どういう意味だてめえ」

「いや、どうもこうも……」



「付き合ってるんだ」



「……は?」

「ごめん、とっくに気づいてるもんだと……」


「てめ……っ! いつの間に!」

「結構前から……」


「どっちだ! どっちと付き合ってる!?」

「どっちとっていうか……」



「どっちもっていうか……」

「はあああああああ!?」



「てめ、はあ!? いつから、そんな、ハーレムっ……!」

「ハーレム……? いや、違うよ」


「何が違うっていうんだ! 二人も手籠めにしておいてよぉ!」

「いや、だからさ」



「二人が、付き合ってるんだ」

「はあ?」


「僕と二人が、じゃなくて。彼女たちが付き合ってるんだ。女の子同士で」

「……What?」



「え、なに? それ?」

「心中お察しするよ……」


「俺が、『どちらにしようかな〜』ってしてる間に、どっちも手遅れになってたの……?」

「ごめん前言撤回するね」


「お前……そうさせないための空調役だろうがよ……」

「ちがうし……宿に泊まる間女子部屋で起こることなんてしらないし……」


「なんでこんなことに……」ポロポロ

「泣かないでも……ほら、そういうわけだしさ、クビなんてやめてこれまで通り四人で頑張っていこう?」


「それ知って頑張れるわけないだろ! もういい! 俺が出てく!」

「えぇ……そう……」


「出てくから! もう絶対出てくからな!」

「うん、名残惜しいけど、元気でね」



「……お前も、くる?」



「いかない」

「ちっくしょおおおおお!!」





 こうして、僕らのリーダーは勝手にパーティーを出ていった。


『あっ、だめ……エアコンに見つかったら……!』

『大丈夫、アキラの代わりの前衛なんてそう簡単に見つからないわ。だから今日はこのまま夜まで……ね?』

『んっ……!』


 パーティーの柱を失ってしまったが、僕はこうして、仲間がいる隣の部屋に聞き耳を立てていられれば十分である。


 あと三日くらい見つからなかったことにして楽しもうかな。


 はぁ、てぇてぇ。





_____

☆あとがき☆


 おもしろ会話トレーニングなのに初手設定パンチ入ってる。

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