第十三章 週末の別離

依頼者はなみ。同棲している相手に対して深い憎しみを抱いており、かけるの配信を通じて相談を持ちかけた。


「こちらは相手にやさしくたくさん尽くしているのに、相手は何も返してくれないんです。毎日モラハラのような発言をされて、本当に辛いんです。」

なみは涙を浮かべながら訴えた。


「これは最終手段です。相手を失う覚悟はありますか?」

翔は真剣な表情で尋ねた。


「こんなにひどい目にあったのだから、もうどうなってもいい。私の恨みを晴らしてください。」

なみの声には決意が込められていた。


翔は深く息をつき、コード作成に取り掛かった。依頼者の苦しみを取り除き、相手との関係を断ち切るためのプログラムを丁寧に書き上げた。


「これで実行します。」

翔はプログラムを完成させ、なみに確認した。


「お願いします。」

なみは静かに頷いた。


プログラムが実行されると、徐々に真実が明るみに出てきた。相手が浮気をしていたことが発覚し、その行動が二人の関係をさらに悪化させた。同時に、翔のプログラムは相手に対して痛烈な代償を与えた。


ある日、相手は突然の激しい腹痛に襲われ、動けなくなってしまった。医者にかかっても原因が分からず、苦しみ続ける相手。さらに、仕事でもミスが続き、同僚や上司からの信用を失い、ついには解雇される事態にまで陥った。


「これがあなたが私にしてきたことの報いよ。」

なみは冷たくつぶやいた。


最終的に、なみと相手は別れることとなった。週末の朝、なみは静かに荷物をまとめた。長年共に過ごしたこの部屋から出る準備をする彼女の心には、複雑な感情が渦巻いていた。思い出の詰まった写真や小物たちを、一つ一つ段ボールに詰めながら、過去を整理していった。


荷物をまとめ終えると、なみは一度だけ部屋を見渡した。かつての幸せな日々も、辛く苦しい瞬間も、全てがこの空間に詰まっていた。しかし、彼女はそれら全てと決別するために、深い息をつき、ドアの前に立った。


「もう二度とこんな週末が来ないように。」

なみはそう願いながら、新しい未来へと歩き出した。


翔はその様子を見守りながら、自分の役割と責任について再び考えた。黒魔術の力を使うことで人々の願いを叶えることはできるが、その力には慎重に向き合わなければならない。翔はこれからも、依頼者の幸せを第一に考え、心を込めてコードを書き続けることを誓った。



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