第7話 まずは冒険者登録をしよう
さて、クリムに連れられてやって来たのは冒険者ギルド。
冒険者としてやっていく以上、ここに登録をしないといけないんだとか。
クソだるい話だが、これをやってないと報酬が貰えないらしい。
ちなみに青髪無表情娘のイブはまだ合流していない。
もう昼間なのに何してんだアイツ。全く俺の真面目さを見習ってほしいもんだ。
「すみませーん。冒険者登録したいんだけど」
「ではまずこちらの魔道具に手を触れてください」
美人で巨乳な受付嬢が言いながら出して来たのは……水晶? 何だコレ。
「この魔道具で貴方のステータスを調べて適性を調べるんです。適性によって戦士や魔法使いなどの職業に就くことが出来ます」
なるほど、力の低い戦士とか役にも立たんからな。
しかし、ステータス、ね。なんともファンタジーな用語じゃないか。
少しワクワクしながら水晶に手を触れると、何やら水晶が紫色に光り出した。
「これは……!」
おお、何やら驚いているようだ。
まあ言うて俺も女神に選ばれし者。とんでもないステータスを秘めていてもおかしくは――
「か、かつて見た事ないくらいに貧弱ですっ!」
そんな事だろうと思ったよ! だってクズニートだもんな、俺!
でも期待くらいしてもいいじゃん!
「特に魔力と幸運が見た事ないくらい低いですね……これだと日常生活に支障が出るレベルかと」
「え、そうなの?」
「ええ、まあ……よく今までご無事でしたね」
なるほど、つまり女神に選ばれるってのは不幸な出来事だった訳か。
色々と納得いくが。
「そうですねえ。このステータスですと……冒険者向けの職業ではないですが、こちらが適性職業になります」
「どれどれ?」
手渡された紙にはいくつかの職業が書かれている。
なるほど、これが俺の適性職業か。えーっと……?
1.初級冒険者……あらゆる職業の基礎。全ての職業の低等級スキルを取得できるが成長が非常に遅い。
2.遊び人……遊びのプロフェッショナル。あらゆる遊びを極める可能性がある。賢者に転職は不可。戦闘力は皆無。
3.詐欺師……話術と詐術に優れ、人を騙す専門家。戦闘力は皆無。クズなあなたにオススメ。
「俺は真の男女平等主義者だから女だろうと余裕で殴れるぞ?」
「ひぃっ!? や、やめてください! 私が選んだわけじゃないんです!」
「あぁ……女だろうと容赦ない姿、素敵ぃ♡」
何か変態が湧いているがとりあえず無視。
しかし、何だこのクソみたいな選択肢は。実質一択じゃねえか。
「これ以外は無理なのか?」
「うーん。貴方のステータスではかなり難しいかと……」
「どんだけ低いんだ俺のステータス」
「でもステータスに補正がつきますし、無職よりは良いと思いますよ?」
「ステータス補正とかあるのか。なるほどなぁ」
だったらもう確定だろ。不満はあるが仕方ない。
「よし決めた。俺の職業は――詐欺師で頼む」
「はい! 初級ぼ……え? いまなんて?」
「詐欺師で頼む」
「えええええっ!? さ、詐欺師ですか!?」
だってこんなの一択だろ。
成長が遅い初級冒険者なんてやってらんねぇし、遊び人ってのも何か違う気がする。
それに詐欺師なら上手く他人に取り入れば働かなくても生きていけそうだしな。
「……あはは。考えてることが分かっちゃって嫌だなぁ」
「さすがですご主人様! 清々しいまでにクズです!」
喧しい。外野は黙ってろ。
「あの、本当に宜しいのですか?」
「早くしてくれ」
「分かりました……では、こちらに名前をお願いします」
名前。名前かあ。うーん。そういやすっごい今更なんだが……
俺、異世界人を名乗っても大丈夫なんだろうか?
いや意外と結構な数の異世界人がいるっぽいのは知ってんだが、評判がめちゃくちゃ悪いんだよなあ。
ここは偽名を使っておいた方が得策かもしれない。
「……よし。これで」
冒険者ダーク。それが俺の新たな名だ。
うん、中々いかしてるな。
決して中学時代に使っていたハンドルネームとかそういうのではない。ないったらない。
やめろ、黒歴史を掘り返そうとするんじゃない。俺はネカマ姫プレイなんてしてないんだよ。
「ダークさんですね。職業は詐欺師……はい、登録できました」
「おう、ありがとよ。よっし、じゃあクエスト行くか!」
爽やかな気持ちで振り返ると、そこには異世界で得た新たな仲間達の姿。
若干あきれ顔ながらも仕方が無いなぁと笑っているクリム。
ちょっと関わり合いになりたくない表情で息を荒げているリーン。
そして奥のテーブルで今にも死にそうな顔で突っ伏しているイブ。
……いや、何やってんだあの青ロリ。
真っ青を通り越して土気色の顔で、しかし恍惚とした表情を浮かべてんだが……大丈夫かあれ!?
「お、おい! あそこで状態異常っぽい顔色になってるの、イブだよな!?」
「あー。またやったね、あの子。まったく、ほどほどにしとけって言ってるのに!」
「まったく懲りませんねえ、イブは」
いやそんなほのぼの会話してていい状況かコレ!?
今にも死にそうな顔色なんだが!?
「イブの趣味は魔法の研究でして。よく自分に状態異常魔法を使ってああなってるんです」
「見た感じあれは幻覚と毒かなっ!」
「……あれはまさか、伝説の黄色いワニさん……?」
うわぁ。見た目がヤバイものの中毒者なんだが。
関わり合いになりたくねー。
この後こいつらとクエスト行くってマジか……?
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