異世界クズニート~クズスキル「パチンコ玉生成」が実は神スキルだった、なんて展開は有り得ない~
@kurohituzi_nove
第1話 異世界転移
俺の名は
二十七歳無職。何処に出しても恥ずかしいクズニートである。
今日も今日とて日課の一円パチンコに向かうべく、着古したボロ着のまま家を後にした。
家に居ても親の小言が煩いだけなので朝からパチンコ屋に行くのは理に適っているのだ。
一玉一円の一円パチンコなら数千円もあれば一日遊べる。
上手く当たれば小遣い程度にはなるし、たまには親に土産を持って帰るのもいいかもしれない。
なんて親孝行者なんだ、俺って奴は。
「今日は近くのジュラシックが新装開店か。とりあえずそこに……」
そんな事を考えながら大通りを歩いていると。
「きゃああああ! コンビニ強盗よ!」
コンビニ強盗? こんな朝っぱらからご苦労な事で。
見ると、丁度正面から覆面を被ったタンクトップ姿の筋肉だるまがこちらに走って来ていた。
……なんだあれ。熊? 仮装?
「邪魔だ! どけぇぇぇ!」
筋肉だるまは叫びながらこちらに駆け寄って――速いっ!?
そのまま避ける間もなく、俺は世界新記録を狙えそうな速度の不審者に撥ね飛ばされた。
巨大な質量にぶち当たり、平均的な体格の俺は空中を舞う。
くそ、まだ涅槃ゲリオンの新台打ってないのに……
そんな事を思った直後に地面に落下し、俺はそのまま意識を失った。
直前に「パワー!」と聞こえた気がするが、きっと気のせいだろう。
※
んで、今に至る。
「……つまり俺はタンクトップ姿の覆面マッチョに轢かれて死んだ、と」
「そうなりますね。スメラギシンゴ様、ご愁傷様です」
目の前の美女はとても悲しそうな顔でうつむく。
周りを見渡すと、ここはどうやら石造りの神殿のような場所らしい。
なんか似たようなものをゲームで見た事ある気がする。
「そんで?」
「現在、不慮の事故で亡くなった方限定で特別なスキルを進呈して生き返って頂けるキャンペーン中でして。スメラギシンゴ様は見事当選されました」
「ふーん」
特別なスキル……ゲームとかであるやつか? よく分からんが手からビーム出せたりするんだろうか。
「……あの、嬉しくないのでしょうか?」
「うーん。俺ってば人生に何の未練も無いからなあ」
友だちもいないし、彼女なんてもっての外だし。
家族には早く死ねって思われてるだろうしなあ。
唯一の趣味って言えるパチンコもそこまで熱がある訳じゃ無いし。
……ん? パチンコ?
「そうだ。じゃあさ、無限にパチンコ玉を生み出せるスキルとかいける?」
「……はい? パチンコ玉、ですか?」
そしたら俺、働かなくても大金持ち確定だし
うわ、頭良くないか俺!?
「構いませんが……本当にそれでよろしんですか?」
「よろしいんですよ。そうと決まれば早く頼む!」
「分かりました。何か深いお考えがあっての事でしょう。貴方様には『無限にパチンコ玉を生成できるスキル』を授けます」
勝ち組人生キター!
これで回りの奴らにもクズニートだのド底辺だの言われずに済むぜ!
金持ちになったら何しようかなー。うーん……特に思いつかねーけど、適当に遊んで暮らすか!
「ありがとな、えーと、そういやアンタ、名前は?」
「私の名はクラウディア。創生を司る女神にして、『これからスメラギシンゴ様が向かう異世界』アースフィアの管理者です」
「……は?」
えっと、その異世界ってのは何だ?
なんか、話がおかしな方向に向かってないか?
話を整理しよう。
俺は死んだ。そしたらクラウディアって女神が特別なスキルを与えてくれて、そんで生き返って……
……おいおいおいおい。これってまさか、もしかして、もしかしたりする?
まさかこれ、ラノベでよくある異世界転移ってやつか!?
「では時間もありませんのでサクッと送りますね。頑張ってください」
冗談じゃねえ! 異世界って言ったらどうせモンスターとか魔王とかがいるんだろ!?
そんな危険な場所に行きたくねえ!
ていうか行くのが確定としても、せめてもうちょいマシなスキルをくれ!
「待て待て! キャンセーー」
「それでは! 行ってらっしゃいませー!」
最後まで言い切ることも出来ず。
俺はとんでもない量の光に飲み込まれた。
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