第2話 夢うつつ 情報収集

学校で頬杖をついて黄昏ている

いわゆる放心状態だ。あんな現実見せられて正気でいるために

なによりために学校で活動をしている


部屋にいたらつい眠ってしまいそうだしそして恐怖を緩和するためでもある

あれが現実と裏付ける四角い箱。仮にアイテムボックスと俺は名付けた


ミッションというものがいつ起こるかわからない為用心のため鞄に常に携帯している。ポータブルサイズのため持ち歩けて。

というかこのために作られたのではないのかと思うほどコンパクトな代物でそんな小さな箱の中に質量保存と物理法則を無視したものが収納されている。


黒衣と漆黒の剣。ばかげているが実際に起こっているので否定しようもない


500ゴールドはキャッシュの様に実物ではなくデータとして保存されていると思う

もらったのにもかかわらずその金貨みたいな名前の物がどこにも見当たらず

試しに箱に触れて考えていると立体映像ホログラムとしてウインドウが表示されてゴールドがそこに表記されていたのだ


知れば知るほど頭が痛くなる。そしてこれがタチ悪く現実ということが逃れられない事実である

異世界というだけでも頭痛が痛くなる案件なのに夢を介して戦いに行くというのは

どこの厨二妄想小説だよと突っ込みたくなる

授業中ずっと普段聴かない勉強を真摯に聞き意識を逸らし

そうした中で考えていた。次に謎声に質問する内容をだ

夢での死が現実ならば何も知らないということが一番の敵だ

そしてゲーム形式ならば無理難題は押し付けてこないはず。

必ずクリアできる法則がどこかにありそれを紐解かなければ死あるのみだ


********


休憩時間中トイレにこもる。人に見られない場所と言えばここくらいだろう

一度も安らげた気がしない。いつあんな戦いを強いられるか気が気ではない


脳をフルに回転させ現実のみに意識を集中する。眠らないよう意識を覚醒させて


謎声曰くばれたら即ゲームオーバーと聞く。ならば危険な綱渡りだが極力見られない

場所で調べるほかないどちらにせよ危険には変わりないのだから


「昨日の戦いで防御が働いてなかった。どういうことだ?」


小声で箱に語り掛ける。聞かれたら信じてもらえないだろうがこれも命懸けだ

セーフラインがまだつかめていないのと思考するだけで答えてくれるとは限らないという安全策のためだ

そしてチャット機能のようなものが浮かび上がり質問の内容を箱は表記していた

音声で読み上げないのは情報漏洩防止だと思い安心する


≪力を行使するという意思がなかったからです。使わなければ機能しない仕組みです≫


そりゃ仕方ないだろう。夢なのだから現実で戦った気分になれるわけがない

ということはゴブリンを殺そうとしたときにたやすく切れたのは防具と武器を使う俺の意思に呼応したということか…?

しっかし…初回クリアした人間はよほど血に飢えた奴に違いないと引いて。俺は気づいた。

俺以外にもプレイヤーがいる?ゲームの様に展開されているのと俺だけ特別なのはありえないと考慮すれば当然だがこんな過酷なことをやっている奴が数十人

。数百人いるのか…?俺の知らないところで?俺が知らない間に?


聴いて回りたいところだがバレれば死。それは他プレイヤーも同じだろう。そんなリスク俺だったらやらない。ため息をついてさらに気分が落ち込む


そして情報を共有するすべがない事にさらに落胆した。

なんかこう…助け合いたい分かち合いたいのだ今の悩みを


そう普段使わない頭を使ったためか、眠気が襲う

―眠るなと叱咤する。だが睡魔から逃れられはしない

睡眠導入剤はあれど眠らない薬などない

どうすれば。またあのミッションがと戦々恐々しているとき思い出す


『昼寝をしてショップで道具を整えな』


つまり日中はミッションが来ないということ

殺し合いが起こるのは夜限定。夜眠らなければミッションも…という虫のいい発想は捨てた。正直というか絶対やりたくないがミッション回避のペナルティがないという希望的観測は捨てたほうがいい

今できるのは授業を休んで眠ること。眠れる場所と言えば保健室しかない


*******


仮病でごまかしなんとか床につけた

眠りたくないが生き残るためには準備が必要だ

回復アイテムや強化アイテムに強い武器がなければ殺される

意識は自然と沈み気が付けば出店の前に突っ立っており正面には店員らしき男が目の前に現れた


「いらっしゃい。お客さん。今日が初めてだね?」


「あ、はい…」


「君たちも大変だねぇ。こんな茶番ゲームに巻き込まれちゃってさ

ああ、仕事しなきゃだね

こっちも初回サービスで安くしておくよ

ウィンドウから商品を選んで」


そういわれゲームの様に現れるウィンドウ。これなら店員さん必要ないのでは思ったが…穿ちすぎだとは思うがこういったところにヒントというものは隠されていそうで


「ここで話を聞くってできますかね?」


「できるよ。用が済めば目が覚めるし話せる範囲なら提供しよう

僕としても気の毒に思っているからさ」


同情するなら超強い武器無料で提供してさっさと魔王を倒させてほしい

と思ったが飲み込んで


「ショップは昼寝でいつでも利用できるんですか?」


ここは重要だ。夜になればミッションという法則性を確かなものにするための質問


「ああ、レム睡眠ならいつでも。ノンレムだとミッションになるから気を付けてね」


聞いておいてよかったということよりも寒気が上回った。ここで熟睡すれば即座にミッション扱いということになるからだ。ノンレムだと夢は見ないのだがそこ突っ込んだらいけないのかな…?


「夢を見ている間は現実時間はどうなっていますか?」


「基本的に左右されないね。例えばここで5時間話をしていても

現実では数分しか経っていない。だから事実上無制限だね」


眠っている時間が数秒でもここでは何時間もいられる

これはいい情報だ。眠っている時間=リミットではないのならいくらでも情報を獲得できるチャンスがある


そして…あまり不況を買わないように最後の質問。一番知っておきたい話を切り出した


「では一応最後、なんで現実世界で武器が使えるんですか?」


「それは理屈の話かな?それともなんでそんなことをする必要があるからかな?

前者なら答えられないけど」


「後者です。正体がバレるリスクがあって武器が使えるなんて矛盾しています

その理由が知りたいんです」


しばし沈黙。そして申し訳なさそうに店員さんは答える


「ミッションで取り逃がしたモンスターは現実に出現する

その始末だよ」


「!?」


これ以上おかしなことはないと思っていたが

どうやら想像以上にヤバい話が浮上してきた

もしかして異世界から侵略を受けているのか…?


「まあこれは義務とかじゃないし放置してもペナルティはないよ

その代わり倒せばボーナスがもらえる。ゴールドの増額とか武器を無償強化とかね

対象によって変わるから強い奴をあえて逃がして現実でボーナスをもらうプレイヤーもいるね。でもあまりに強い奴だった場合現実に甚大な被害が出るからその前にペナルティが付くけどね」


そんなやつがいるのか。そしてもしかしたら知らぬ間にそのモンスターがいる日常を送っていたという事実に戦慄する


思った以上にすさまじい収穫と知りたくなかった事実が同居している

最後といったことに後悔しさらに質問したかったが吐いた唾は飲み込めない


「質問は終わりだね?じゃあビジネスを始めよう

何が欲しいかな?」


500ゴールドで買えるものは対してなかった

武器や防具は強力なので安くても4桁。とりあえず確保できるのは生き残るために回復アイテムを500ゴールドすべてを使って買いあさり。意識が浮上していき目が覚めた



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