インビジブル

竜翔

第1話 ミッション

『ハロー プレイヤー』


ん…。なんだ、ここは…どこだ?

前後の記憶が定まらず。白い空間の中どこからか声がする


「プレイヤーって俺か?」


『イエス。ユーはこれから異世界であるモンスターを討伐してもらうZE☆』


うわあ。いきなり電波発言な謎空間に来ちまったよ…

早速帰りたいが帰り道がわからない

というかここまで俺は何をしていたんだ?


「あの…ここどこ?」


『セーフルーム。ここで装備を整えターゲットをKILLしてもらうZE☆』


「説明になってねえ…まじどこだよここ…」


『正確にはユーの夢の中サ☆ここはドリーム空間なのだ☆』


「何だ夢か」


それならば説明がつく。この意味不明な状況につじつまが合う。

夢と気づけばこちらのものだ。


…いでよ二次元嫁!!!!!


・・・・・・・・・・・・・


夢の中のはずだが何も起こらない。というかついでに目覚めることもできない!??


「夢じゃねえじゃん!??」


『ノンノン。ドリームドリーム。だって、ほら』


そういった瞬間黒い戦士の服と漆黒の剣が目の前に出現した


『こういうの、現実じゃできないだろう?』


顔は見えないがドヤ顔でそういっている気がする

だが気にすべきは用意されたものについてだ


「これは…?」


『ユーの装備。最初だから初期値の武器と装備だが

レベルを上げていけばポイントがたまって

色々武器や防具が手に入るぜ?』


武器や防具といった装備で戦いに赴く

なんかGANTZのミッションみたいだな

目標を倒せとかなんとかスーツや武器があるあたり

その辺を参考にしたのかねこの夢は?


というか…この厨二臭いチョイスはいかがなものかと

黒い戦士服に黒い剣ってSAOのキリトか!!厨二満載やんけ!!


「えっと、これを着ろと?」


『着なきゃ死ぬぜリアリー?』


「マジかよ…GANTZといいSAOといいバトルロアイアル好きだな俺…」


『そうそう、その装備はユーのもんだ。現実に持って帰っていいぜ☆』


「はいはい、ご都合主義乙」


どうでもいい情報ありがとう。と聞き流す。

夢の中の物持って帰れるわけねえだろJK。どんだけGANTZ好きなんだよ俺は

とりあえず言われたとおりに着てみたが。本当にキリトのコスプレみたいだ…

サイズはぴったり。まあ夢だからな。剣も実際のものと違い作り物の様に軽い

現実なら噴飯ふんぱんものであるがまあ夢だし大目に見てクレメンス


『アーユーレディ?準備はできたか少年?』


「少年じゃねえよ。四月一日わたぬき こうだ俺は」


『じゃあターゲットを発表だ。≪スカーゴブリン3体≫の討伐でミッションクリアだ

簡単だろ?』


ウィンドウが開き倒すべきモンスターが表示される

そして突如浮遊感を感じたと思えば


『レッツ。異世界サバイバー☆』


そのふざけた声とともに

世界は180度変化する。

先ほどまでいた白い空間が消え

何もない荒野の中一人佇んでいた



―――――――――――

―――――――

――

「ターゲット見つけるナビないとか不親切設計すぎるだろ…」


GANTZならレーダーがあるもののここにはそんなものはない

いや待てよ…異世界でウィンドウ出せるなら


「マップ表示!」


そう言うとマップが現れターゲットの位置と数が赤い点で表示されている


「まあ夢だしな。ご都合主義乙乙ですー」


などと言って目的の場所へ歩いていく。10キロ離れていたが

防具のおかげか疲れを感じない。スムースに目的地へたどり着いた


そして対象を発見。オーソドックスないかにもくっ殺ゴブリンで

不潔な格好とにおいが距離があるのに伝わってきそうだ


遠距離から狙撃。とかしたいがあいにくXガンやYガンは夢の中には出てこないようだ。不親切!


剣で切るということは肉を絶つ感触があるってことだよな…。ヤだなぁ

そして俺は一般人。虫を殺したことはあるが哺乳類を殺した経験はない

なるべく感触がないほどこの剣が鋭利でありますようにと願いながら


集団で活動し俺には気づいていないゴブリンたち。それぞれが自由行動をとり

注意力は散漫だ。真っ向勝負とか格好いいかもしれないが俺は武術を習ったことがないので不意を突いて切ったり突き刺したりがベスト

なのでやるのはサイレントキル。息を殺し一人になったところの背後に回り

確実に殺せる箇所。首に向かって横薙ぎに振り回す


あっけなく。あまりにもあっさりとゴブリンを斬首。手ごたえも感触も感じない

まあ夢だから現実感を感じないのは普通だろうと

首から上が噴水の様に血液が噴き出し、返り血を浴びて血の匂いと殺したという事実が叩きつけられ吐き気と寒気が同時に起こり、嘔吐した


「ヴ、ォェ…エエエエエエエエエエエエエエエっっっ!!!!!!」


腹には何も入っていない。夜食も食っていない為胃液しか出てこないが

内臓まで吐き出そうとする勢いでえづく。大げさなくらい吐しゃの声を上げ

吐くのが止まらず呼吸困難になりそうだ


生々しく体の血がへばりつき、殺したという事実を受け止めきれない

―本当に、これは夢なのだろうか?

そしてそうしている内に声を聞きつけゴブリンの集団が俺のもとへ集まりだす


『GGGGAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!』


剥きだした相貌は憎悪のみで仲間を殺した無念がこっちにも伝わってきそうだ

―夢だ。ただの夢だ。俺は誰も殺していない

そう言い聞かせて呼吸を整えている間に

棍棒を持ったゴブリンが俺の頭めがけて振り下ろす

―夢だから痛みなんてない。

―死ぬことなんてない。死んだら現実に帰るんだ

だからよけることなく漫然と打ち下ろされる棍棒を眺めていて

無抵抗で打擲する打撃を受けた瞬間。

「あ…ああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!

痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!!!

激痛と意識がシェイクし暗くなっていく。あまりの痛さに地面にのたうち回り

追撃の攻撃が来て今度は肋骨に向けて棍棒が着て


ゴキリッバギバギ…


「ガゴッオボボッ!!!ゴボッ!!が…痛…死」


肋骨が砕けた。その破片が内臓に突き刺さり内臓もまたゴブリンの攻撃で破裂する


ががgっがががががががががががっががっががががががががががっがががががががががががががががががっががあががっががっがっがっがgっががががっがっががっがっが


いたみでしこうがなくなる。いたいしかかんじない

しぬしぬしぬしぬしぬしぬしぬうううううううううううううううううううう!!!!!!!!!!!


死ぬから。死んだら終わる。目が覚めるんじゃない。永遠の眠りにつく

そう、ぼっこぼこに棍棒で絶え間なく五体すべてに打撃を与えるごとに骨も筋肉もズタズタになっていく


もうだめだ。これで体を動かせって無理

このまま死ぬ。それ以外ない。諦めるほうが楽で

早く死なないか痛みで意識が飛んでくれないかとか考えて


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い


「ご…げッ。ゲブ…あ・ガガガガ」


胃液の代わりに血のシェイクが蛇口をひねる


――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――

はやくおわってよなんでまだしなないのずっとこんなにいたいのたえられないけどくるいたいきがふれたい助けて助けて助けてエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


狂乱し俺は無意識のうちに生存本能のまま剣をふるった。棍棒の攻撃を受けながら

折れた腕で振るった。ゴブリンの悲鳴が聞こえる。

ふるったフルッタフルッタふるったふるったふるったふるった

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねええええええええええええええ!!!!!!!!!!!


そして気づけば倒れていて。見えるのはゴブリンの死体の山


それを見てつい笑って


「が」


ざまあという前に意識が途切れた


――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――

気づいたらまたあの白い空間にいて

体を蹂躙した、もう感覚もない部分すら血液と神経が通っていて

ミンチになっていた体は元どおりに戻っていた


「ふふ・・・はは・・・・クキャキャキャキャキャキャキャキャキャ

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


狂った狂った狂った狂った狂った思う存分狂った


想像を絶する。死んだほうがましなリンチを。死んでもおかしくない激痛がありながら死なないという苦痛を経験し気がふれた


だがそう思っているのも束の間で何やら気分が心地よく理性が戻っていく

そして謎の声が聞こえた


『・・・なっさけな!初回でこんなに無様なのユーくらいだぜ?

まったく防具がなかったら死んでたぜ。いや死んだたんだけど

初回特典で死なないように細工したんだけどネ☆』


罵声と暴言を追撃されてあんな目に遭った理由がわかり怒髪天を突いた。


「ふっざけんじゃねええええええええええええええ!!!!!!

テメエどこいやがるぶっ殺すから出てきやがれえええええええええええええ!!!!!!!」


憤怒が爆発し噴出する。だがこんな目に遭わせた張本人は相変わらず現れず


『もちつけって。善意で死なせないようにしたってのにひどいぜェ

それに夢だから全然でしょ?』


夢だとわかっていても。今まで見たことない悪夢で忘れることができても…!!!


憤懣が抑えられない。だがここで取り乱したら余計翻弄されると冷静になり留飲を下げる

そうだ夢だ。だから…


『ああ、今ので経験値は12だ。あとレベルアップまで156

ゴールドはサービスで500ゴールド。これで装備を整えるといい』


はっ!信じるかよそんなの!だってこれで終わりなんだから次なんてない

あってもどうせ忘れるしどうだっていい

そう笑い飛ばそうと唾を吐き捨てて


「いいから夢から覚まさせろや!!!!!」


『ドントウォーリー 。お望み通り目が覚める

ではまた次の夢で会おう☆』


マジでくたばれくそがと吐き捨てて

着替える間もなく意識が浮上し


気が付けば自室に戻っていた。正確にはベッドの上で上体を起こしているのだが

やな、夢だった。最悪だ。金輪際見たくない。そう嘆息をついて

今あるありがたい現実を見まわして気分を切り替える


朝飯何にしようと考えて、ゴブリンの死を思い出し嘔吐感にさいなまれたが

呼吸を整えて夢を思い出さないように起き上がった時


ふと、部屋の隅に見慣れない箱が置いてあった


嫌な、予感がした。だから知らない振りをすればいい


≪――『そうそう、その装備はユーのもんだ。現実に持って帰っていいぜ☆』――≫


でももし


≪―――――――――――現実に持って帰っていいぜ―――――――――――――≫


本当なら、もしあれがまだ続くなら。ここで見過ごせば確実に


ありえないありえないありえないありえない!!!!!!


きっと忘れていただけだ。どこかで買ったものだろう


だから確認。ただの確認。だってありえないし非現実的だし

あの時俺は着替えていなかった

違う違う違うゥうううウウウウウウ!!!!


早鐘を打って汗まみれのまま恐る恐る。その箱に触れると

自動で開いて現れたのは…


「・・・・・・・・・・・・・」


夢の中に出てきた防具と剣が出現した


絶望で

視界がくらみ、

ひざから崩れ落ちて。

絶望に打ちひしがれたまま体育座りでうつむいた

夢じゃ、なかった。現実、だった――――――――


――tobeContinued

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