いけいけ勇者様92

最上司叉

第1話

【カチャカチャ】


【パクッ】


「美味しい」


勇者と魔王は自分たちの住む街の大衆レストランで2人きりで食事をしている。


勇者は魔王がなぜ急に2人だけで食事をしたいと言い出したのかさっぱり見当もつかなかった。


【ゴクゴクッ】


勇者はジョッキに入った酒を一気に飲み干すと魔王を見た。


「どうしたの?食べないの?」


魔王が不思議そうな顔で聞いてくる。


「あぁ」


「美味しいよ」


「あぁ」


「?どうしたの?」


「魔王…何かあったのか?」


「?…!!」


魔王は俯いてしまった。


「どうした?」


「…イヤだったかな?」


「何が?」


「2人で食事するの?」


「嫌じゃないが…」


「!!」


魔王は凄い喜んだ笑顔で勇者を見た。


「…」


勇者はさっぱり訳が分からない。


勇者は魔王に避けられていた気がするんだが違うのか?


何がどうなっている


まさか俺のこと…


いやいやないな


相手はまだまだ子供の魔王だ


「どうしたの?」


魔王は心配そうに勇者に聞いた。


【ゴクゴク】


勇者はおかわりした酒を飲み料理を食べ始める。


魔王は笑顔になり食事を再開する。


するとそこへ誰かの話し声が聞こえてきた。


「おい、アイツらって…」


「あぁこの街をめちゃくちゃにした…」


勇者は食事の手が止まる。


「どうしたの?」


魔王はさっぱり訳が分からず聞いてくる。


「いや、なんでもない」


「?」


勇者は苦虫を噛み潰したような顔をした。


「魔王…出ようか?」


「?どうしたの急に」


「あぁ…ちょっとな」


魔王はさっぱり訳が分からない顔をしている。


「いい気なもんだよな、この街をめちゃくちゃにしといて女と2人で呑気に食事なんて」


「!!」


勇者は間近で声が聞こえて振り返る。


【ガッ!】


振り返った瞬間勇者は顔を殴られた。


【ガシャーン!】


勇者は殴られた拍子で椅子ごと倒れた。


「!!大丈夫?!」


魔王は慌てて勇者に駆け寄る。


「ちょっとなんの騒ぎだい!」


勇者は立ち上がると店主に言った。


「あぁ迷惑かけてすまない」


勇者はテーブルの上にお金を置いて店を出ようとする。


「ちょっと待ちな!」


勇者はその場で留まり振り返る。


「まだ料理が残ってるじゃないか!」


「…」


「誰だろうが私の料理を残すなんて許さないよ!」


「…」


勇者と魔王は呆気にとられている。


「それはそうとそこのアンタ達!」


勇者に絡んできた男達がビクッとなる。


「私の店で騒ぎ起こしたんだから許さないよ!」


「はい!」


「何があったのかは知らないがこの男は街を救ってくれたんだよ!」


「はい!」


「とっとと出ていきな!もう二度と来るんじゃないよ!」


「…」


「ほらそこの2人!さっさと食べちゃいな!」


【ガタ】


勇者は倒れた椅子を起こして座ると食事を再開した。


魔王も慌てて座り食べ始める。


「ほら!」


【ドン】


勇者と魔王の前にデザートが置かれた。


「嫌な思いさせちまったからサービスだよ!」


「…ありがとうございます」


「ありがとう」


勇者と魔王はお腹いっぱいになり店を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

いけいけ勇者様92 最上司叉 @moemee

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

同じコレクションの次の小説