第23話 再会


 未だ止むことの無い殴打。


 白濁とする意識さえ途切れようとしたその時――


 足元の何かが強烈で眩しい光を放つのをおぼろげに感じた。





 ――パルル神殿――


「ようこそ天斗てんと。また会いましたね。貴方は現在いま生死の境目にいます。いかがでしたか難攻不落ダンジョンは。あのオークは想定外でしたが、だいぶ懲りたのではないでしょうか?」


 気づくと目の前には、慈愛に満ちた笑みを浮かべる女神パルルが、俺に優しく語りかけていた。

 彼女の背後からは後光が射しており、さらさらの美しい金髪が光輝いて見える。


 いつの間にか俺は、再びあの神殿に居た。足元に足枷は無い。


 俺は女神パルルに、心からの謝罪をする決心をした。


「……パルル。俺は……」

「その先は無用ですよ。貴方の気持ちは伝わってます。少しワタクシの話を聞いてもらえますか? この世界の国々は現在、魔王率いる魔族、魔物に侵略されつつあります。そのため国は荒れ、人々は毎日どこかで殺されております。生憎あいにく人間側は劣勢で希望を失いつつあります。人々には救世主が必要なのです」


 パルルは真剣な眼差しで語る。


「それが、俺だと?」

「はい。天斗様、今こそ勇者になっていただけますね?」


「一つ条件がある」

「なんなりと」


「一回だけやらせてくれ」

「……」


「……だよな、じゃぁ、せめてツンツ……」

「強制転移」


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