第11話 罪人パンサー


「てめぇ……何だコレは……ナめてんのかぁぁぁぁぁっ!!! ぶっ殺す!!!」「ひぃぃぃぃぃっ」


 怒り狂った奴は、立ち上がり剣を抜くと、腰を抜かす俺の鼻先に剣を突きつけた。


「ま、待ってくれ! 話せば分かる! 本当にコレが全財産なんだ! そ、そうだ、この鉄球をやるっ。コレをやるから、なっ? なっ?」

「あんだとぉ?」


 異世界ダンジョンに強制的に転移させられて、一日目に殺されてはクソ女神への復讐どころではない。

 この鉄球を奴にあげれば奴も満足、俺も満足、一石二鳥じゃないか。


「この鉄球は使い道いろいろだぞ? 筋肉鍛錬に使用するもよし、魔物の頭をカチ割るなり、漬物石やちょっとしたインテリアにも最適だ! どうよ?」


 俺は奴に、鉄球を優しく撫でながら、そのすごい価値を説明する。


「ほぉ……なるほど。何言ってるか半分わからねぇが、そんじゃてめぇの足ぶった切らないといけねぇなぁ……へっへっへっ」

「なっ!?」


 しまった! やぶ蛇だった! 鉄球は頑丈そうな鎖で繋がってた!


 奴はニヘラと口の端を歪めると、剣を高く掲げ一気に振り下ろした。


「ふんっ!」

「うぁぁぁっ!」


 寸でのところで、足を引いて難を逃れた俺は、脱兎の如く逃げ出し……地面に激しく突っ込んだ。くっ、あご痛ってぇぇぇっ、てかコイツまじで俺の足を狙ってっ。


「ぶははははっ、なにやってんだおめぇ。そんなもん付けて、おめぇやっぱ罪人なのか? どおりで、目つきが悪いわけだ。なら罪人の先輩であるパンサー様が直々に開放してやろうじゃねぇか。ぶははははっ」

「俺は冤罪えんざいだ! お前らとは違う! 一緒にすんなっ」


 もしやとは思っていたが、奴等は犯罪者だったようだ。

 最初に会った人間が犯罪者とはツイてない。

 どうせなら、可愛い女の子が良かった。


 そんなことより今はコイツを何とかしないと、殺されてしまう!

 異世界ダンジョンの治安どうなってんだよ。


 俺は一か八かの賭けに出ることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る