困窮令嬢、引き籠り公爵子息を引きずり出すバイトを始めました
石岡 玉煌
01
世界は不平等である。
だってそうでしょ。
世の中には綺麗に着飾って美しく着飾り可愛らしいお菓子を花びらのような口に運ぶ愛らしい乙女がいる反面、陰では汗だくになりながら家族のために必死こいて働く乙女もいる。
誰だ、労働は尊いとか言い出した人。
因みに私は後者だ。
額を伝う汗を豪快に拭い、首からかけた手拭いで頬を拭いた。化粧? バカ言いなさんな、こっちとら常にドすっぴんだ。
クローリア・ヴァンクス、齢十七にして身にまとうのは汗だ。
「クローリア! ちょっといいか?」
「はい!」
クローリアと呼ばれた人物、すなわち私。
絶賛バイト中です。
「これが今日の給金だ」
「ありがとうございます!
……ん? なんか少し多くないですか?」
「あのぉ……実はだな……」
悲しいことに、私は同年代に比べて労働経験が豊富である。
いくつものバイトを掛け持ちして、時間があればあっちに行き、条件がいいと聞きつければ馬の如く駆け出す。
なんてことを繰り返していると、お金の計算も必然的にスピードが上がってくる。
貰ったばかりの硬貨を取り出し数え始めると、早速その特技が活かされたというわけだ。
そして、培われた悲しきアルバイターの直感が頭の中に警告音を掻き鳴らす。
走れクローリア、この場から逃げ出すんだ!
「わあ! こんなにお給金沢山いただいて嬉しいナ! ではお先に「非常に言いにくいんだが、クローリアに来てもらうのは今日限りにして欲しいんだ!」ッダーーーーーー‼」
言われた‼ クソ‼
「なんでですか⁉︎ 人間関係も乱していないしなんなら皆さんに気を遣わせないよう一歩引いたところから作業してますし、遅刻とか早退もしてないんですが⁉︎」
「ああ、クローリカはとても優秀な作業員だ。だがな、仕事というのは適材適所があるだろう」
グッと言葉に詰まった。
こういった土木関係は、詳しいことに確かに私のようなちっこい小娘より後ろでこちらを見守っている筋肉隆々な男衆の方が力もあるし体力もある。
実際体力面で私に不利なところが多々見受けられた。それをカバーしてもらった同僚達には頭が上がらない。いや、その分片付けとか細かいところは率先してやったよ? ほら、適材適所!
なので総監督の言うことは、間違ってはいないのだが。
「お願いします! ここが一番給料がよくて……! 家からも近いんです!」
「俺だってこんな非情なことしたくねェよ。けどな、俺たちにも俺たちの儲けが必要がないなんだ。
明日から一人野郎が入ることになったんだ、お前を三人くらい持ち上げられそうな大男だ」
「私を捨ててそっちを取るんですか⁉︎」
「紛らわしい言い方するんじゃねぇ‼︎」
とんでもねェよ‼︎
もともとブラックだと思っていたけど、ここまで酷いなんて‼︎
よろめく私をよそに、総監督は難しい顔で腕を組んだ。
「最初お前がうちを受けに来た時な、本当は面接で落とそうとしていたんだぜ。でもあまりにも不憫な生活を聞かされたから、今日まで雇っていたんだ」
「知ってます、そんな空気出てましたもん。
だから泣き落としたんですよ!」
「お前、本当に強かだよな……。
大丈夫だ! ここまで強い女は他にいやしねェよ、どこだってやっていける!」
「そういう激励はいいんで、ってちょっとォ‼︎」
私の叫びも虚しく、総監督は他の人の給金を持って配り歩いている。
「(いいなぁ……みんな明日も仕事があるんだ……)」
貰った給金袋を握りしめた。
働くのは好きじゃない。
でも働かないと食っていけないから働くしかない。
「はぁ……割りのいい仕事、また見つけないとなぁ……三日間の食事はなんとかなりそうだけど、こんなのすぐに無くなっちゃうよ……」
いい匂いが漂う市場で、お腹を抑えた。
腰の下では子供達が焼いた肉を串に刺した物を持って、元気に駆けていく。
ううっ……いいなぁ……お肉なんてもう数ヶ月食べてないよ……。
なぜなら、私の家は非常に貧乏だからだ。
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