愚昧がメッセージを寄越したと思ったら、なにやら変なことを宣っている。ストーカーねぇ。どうせあいつの早とちりだとは思うけど。


「では、これで今日は終わりです。今から紙を回しますので、書いて帰ってください。お疲れさまでした」


 よし。ちゃっちゃと書いて昼飯にしよう。

 今日は2限は入れてないので近くのラーメン屋に行くつもりだ。


 小レポートを書き終えて後ろを見ると、一番後ろの段にせっせとレポートを書いている愚妹の姿が見えた。え、お前それ出すのか? まあいいか。

 目を留めて数秒後、弾かれるように顔をあげ、少しきょろきょろして目が合う。なにあれ、ニュータイプかよ。手振りで外に出ることを伝え、あと2分で終わると言っているので、廊下で待つ。


 4分ほど待つと、やたらスタイルのいい女と、ロングスカートの女の子が連れだって出てきた。愚妹がこちらを確認し、見知らぬ姫君をつれてくる。

 が、見知らぬ姫君は俺の姿を見るなり、愕然とした顔で固まったと思ったら脱兎の如く駆け出した。ええぇ。


「あっコラ逃げんな!」


 これまた綺麗なフォームでスプリントする愚妹。ありゃ逃げられなさそう。気の毒に。まあ人の顔見るなり逃げるのもなかなか失礼な奴だが。そういえばあの子見たことはあるな。恐らく何かのコマが同じな気がする。まあ学年が同じなら被る可能性は高いか。


「あっ」


 遠目で見ているとスカートを踏ん付けてびたーんと転けた。うーんやはり不憫。直ぐに妹が確保し、こちらに連行してくる。

 ……とりあえずラーメン食いに行こう。


 @@@


 ……不覚。

 美人なお姉さんにホイホイ着いていったら鈴木太陽殿がいたでござる。逃げようにも美人は脚も速いし転けるし。極めつけは『とりあえずラーメン行こうか』だし。お金がないからと抗弁すれば『俺が払うよ』だし。


 にげられない!!


 夕子ゆうこ一生の不覚にござる。生憎ラーメンは好物ゆえすごすごほいほいとついては行くが、気分は断頭台への道だ。と思っていたらすぐに着いた。


 こんなところにラーメン屋があったのか。いい匂いもするしこの雰囲気は絶対に美味しい。お金はあるからちゃんと払おう。


〈カラン♪〉


「っせー。3名様ですか?」

「はい♪」

「…食券からおねっしまーす!」

「はーい」


 すごい。やる気なさそうなバイト君のモチベが目に見えて変わった。バイト君といっても私よりも暫く歳は上だろうし顔が赤くなるとかでは勿論ないが、笑顔を見せしゃきと動き始めた。


 音符が聞こえるようだが別に媚びているようでもなく、自然な笑顔と愛想でこれは本当に凄い。この人やっぱ美人だしずっと愛想もいいし、癪だけど色々勝てる気がしない。この人が彼女ってんなら諦めもつくのになー。


「普段頼んでるのこれでしょ」

「うむ」

「私はじゃあこれ」

「トッピングはメンマと青葱ね」

「うん。ごちになりやす」


 いや、やっぱりこの美人は彼の妹だと思う。

 なんというかこの熟年夫婦のような空気は、彼女などという浅い関係で醸成できるものではない、と思う。幼馴染という線も考えたけど、それにしては立ち居振る舞いが、所作が似過ぎている。じゃあさっきのは──


「どれにしますか?」

「はいっ! えっと。……じゃあそのおすすめってかいてあるやつで。あっ」

「MAXチャーシューネギラーメンね。ほいっと」

「あっすみません私払います!」


 MAXチャーシューネギラーメン 1140円税込

 あかん。素で普通に欲しいもの言ってしまった。

 払わねば。


「いいって。強引に連れてきたんだし、私も話聞きたいから」

「払うのは俺だけどな」

「いえ、その……」

「ほら入った入った」

「あ。ありがとうございます」

「どういたしまして」


 ……ええい、ままよ。

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