第5話 30歳

30歳


旦那が仕事中に事故にあって


大した事は無かったのだが…入院していた。


夕方、楓は買い物に行こうと歩いていた。


その時…


クラクションが鳴った。


え?私に?誰?


車を見てみると…それは剣だった。




剣が「久しぶりー元気?」と声を掛けてくれた。


「うん、元気よ」


「何してるの?」


 「買い物に行こうとしてた」


剣が「久しぶりだし…ちょっと話せる?」


と言ってくれたから、嬉しくてすぐ


「うん、いいよー」と答えた。




それから剣の車に乗り込み


車が止めれそうな場所に移動して話をした。




剣が「旦那さんは?」


と聞くから入院していることを話した。


それから、お互いの今の生活について話をした。




「俺、夕方あの道をいつも通ってるんだよ。いつも楓がいないかなって思いながら通ってた」


そう言われて楓は、すごく嬉しかった。


剣も、私と同じ気持ちなのかな…


剣から見ても、私は特別な存在なのかな…




剣に「旦那、今入院中だから昼間は病院に行くけど夕方はいるから、また近くを通ったら連絡して」


と言ってみた。


剣は「うん、いいよ」と答えてくれた。




それから、たまに連絡があったら会いに出て剣の車で話をした。


楓と剣は、本当に話をしていただけだった。


二人は、手も握ったこともない。


中学の時に握手をしただけ…


これでも二人で会ったら不倫というのかな…




お互いの家の電話番号をまだ覚えていることに驚いた。


誕生日も…覚えていた。


あの頃こうだったね…とか話は弾む。




剣は奥さんに、少し不満を持っているようだった。


それは、ちょっとしたことだけど…剣にとっては嫌なことのようだ。


それを聞きながら…


楓は、剣と結婚していたら、しょっちゅう喧嘩をしていたかもな…と思った。




剣は、楓が毎日旦那の病院に行っていることについて


「俺なら、毎日一人で来させない。危ないから家にいて欲しい」と言った。


旦那は、毎日来て欲しいと言う。


楓は、こんなにも旦那と性格が違うんだと感じた。




剣の性格は、分かっているようで分かってないのかも…




剣と付き合った時は本当に子どもだった…


付き合うってことも何も分かってなくて…


恥ずかしいばかりで、お互いの事を知ろうとしていなかった。


でも、今こうして大人になって話をしていると…やっぱり楽しい。


でも、そんな時間は長く続かなかった…


旦那が退院することになったのだ。


退院する前日も剣に会って…


「また、近くを通った時に見かけたら声を掛けてね」


「うん、わかった。楓…元気でね」


「剣もね…」




二人は、今の関係をどうすることもできない…




こうして二人の時間は終わった…

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