夏だし、身近に起きた不思議な体験を書いてみようか

御片深奨

第1話 昔の実家での話(台所)

 うちの家は両親共働きで私は古い言い方かな?鍵っ子だった。

 1階建ての一軒家に住んでおり家はほぼ正方形な作りをしていた。

 ほぼというのは玄関とトイレがその正方形から少し出っ張ったような位置にあったから。

 まあ、そんな事は良いか。

 台所には当時家族3名しかいないのにグラスや食器が大量にあり、特にグラスコップ…スタックタンブラー?あの喫茶店にあるようなヤツが10以上あったと思う。

 そういった重ねて置くグラスって埃とかが入らないようにって口の部分を下にして置かれていたんだけど、ある日3段に重ねられていたスタックタンブラーが全て口を上に向けて置かれていた。

 時刻は午後4時。

 学校から帰ってきて玄関を開けて入ってきた私は一人。

 両親は共働きなので居ない。

 小学校低学年だった私は飲み物を飲もうとそのグラスを取ろうとして気付いた。

 で、口を上にしていたら埃が入ると怒られるので私はそれらを全て元に戻すわけですよ。

 口の部分を下にして3段重ねのスタックタンブラーを5つあったかな?15個元に戻して一つを取ってそれに麦茶を注いで飲んだ。

 さて夕食時。

 何故か怒られた。

「グラスが汚れるから上向きに置かないようにって言ったでしょ」

「えっ?うん。だからちゃんとふきん敷かれている部分に口を当てるように並べたよ?」

「だったらアレは何なの?全部上向きじゃない」

 母に言われて私は慌てて台所へと向かった。

 全部上向きになっていた。

「えええ?」

 いやいや訳が分からない。

「学校から帰ってきたとき上向きだったから直したんだよ?」

「逆に直したんでしょ?」

「逆に直したら怒られるのに?」

「じゃあ誰かが悪戯したって言うの?」

「怖いからそれは嫌」

「だったら犯人はアンタしかいないじゃない」

 えー?

 私は渋々ごめんなさいを言い、その場は終わった。


 それがその後4回続いた。

 流石にこれはおかしいと親も思ったらしく、私のせいにする事はなくなったが「またなの?」とぼやくのとカチャカチャと直す音が聞こえた。

 記憶では1ヶ月くらいでそれも無くなったと思うけど、母に聞いたら「覚えていない」の一点張りなのでもしかしたら私の記憶違い…とは言えないんだよなぁ。

 友人が遊びに来たときも同じ事が起きたし。

「こんな変な事が起きるんだよねー」と言いながら直して友達と家の中で遊んでいて、友人が帰ると言い玄関まで送ろうとしたとき、カチャンとグラスがぶつかるような音がしたから2人揃って台所へ。

 そしたら直したグラスが全部口を上にしていた。

 ───翌日その友人に「コイツの家幽霊屋敷なんだけど」ってクラスに言いふらされたのは嫌な思い出だ。


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