シークレットベース 僕たちの秘密基地
菜月 夕
第1話
『シークレットベース 僕たちの秘密基地』
久しぶりに来た僕たちの秘密基地は草生して見る陰も無くなっていた。
あの頃のボクは自分の形が嫌でしょうがなかった。
女の子らしくや女の子として生きる自分が嫌いでしかたなかった。
そしてボクがいつも見る夢に見る世界では男の子で自由に走り回っていた。
そしてあの夏休みに君に出逢った。
ボクは男の子として君に出逢い、二人でここに秘密基地を造って夏休みを過ごした。
ボクはこの秘密基地に女の子としての自分を封じ込めた。
男の子として君と遊ぶために。
でも夏休みの終わりの頃には君に恋をしている自分に気がついた。
そして夢の中のボクは男の子なのに君に恋をして、その恋をこの秘密基地に封じ込めた。
その二つの世界に気がついた時、ボクは女の子として生きている自分が愛しくなった。
あちらの世界のボクの気持ちがボクのこの気持ちになったのだろうか。
それともここに封じ込めたボクの気持ちがあちらのボクの気持ちになったのだろうか。
二つの交わった平行世界。その原点がこの秘密基地にお互い封じ込めたせいだろうか。
でも、女の子として君に逢うのが怖くなってあの夏休みから逃げ出してしまった。
それから10年。もう君はきっと素敵な人に巡り会っているだろう。
ボクの女の子としての心と身体はずっとずっと愛しくなったけれど、その想いはこの秘密基地に埋めてしまおう。その時、声がした。
「もしかしたら君は?」
後ろから声をかけてきたのはあの頃よりずっとたくましくなった君だった。
シークレットベース 僕たちの秘密基地 菜月 夕 @kaicho_oba
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます