第123話 変わらぬ想いとオーバーキル⑫
匠刀にだけ聞こえるくらいの小さな声で呟いた。
彼の気持ちに応えるのは、これがベストだと思ったから。
「親父っ!!」
「おっ、……どうした」
「匠刀、病院では静かにしろ」
「っんなことはどーでもいいよっ」
赤ちゃんを眺めていた両家のご両親と虎太くんの視線が一斉に匠刀に向けられた。
突然どうしたのだろう?と思わず匠刀を仰ぎ見ると、そっと掴んでいた手が、ぎゅっと握り返された。
「今から、桃子の両親に結婚の挨拶しに行って来るっ!」
「はぁ?」
匠刀の両親、雫さんのご両親。
そして、虎太くんが当然のように驚愕してるよ。
だけど―――。
「さっきのプロポーズの返事、……今したので」
「マジで?!」
「……はい」
ありえないようなプロポーズだったけど。
彼の気持ちはちゃんと伝わったから。
驚愕を通り越して唖然とする虎太くんを始め、両家のご両親の反応が凄い。
皆瞬きも忘れて、『大丈夫なの?』といった感じの眼差しを向けて来る。
「モモちゃん、本当にいいの?」
「いいも何も……」
私が彼と一緒にいたいんです。
もう離ればなれになるのも嫌だし、彼の傍に知らない女の人がいるのを見るのも嫌なんです。
私だけの、匠刀でいて欲しいから。
「桃子、行くぞ」
「……うん」
「んじゃあ、そういうことで。桃子の気が変わる前に挨拶して来るっ」
「モモちゃん、俺らも後で挨拶に行くから」
「あ、はいっ」
背後から匠刀の父親が声をかけて来た。
ずんずんと手を引かれて歩かされているから、振り返って会釈する余裕すらないけれど。
「匠刀」
「黙ってろ。……今は何も言うな」
「え?」
「やっぱりナシとか、もう少し時間が欲しいとか、そういうの全部ナシだかんな」
私の気持ちが変わるのを恐れてるみたい。
そんな私、頼りにならないかな。
……そうだよね、消えた過去があるもんね。
そりゃあ、不安にもなるか。
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