第118話 変わらぬ想いとオーバーキル⑦

 2年後の春。


「匠刀早く早くっ、もう産まれちゃうっ!!」

「んなこと言ったって、赤信号なんだから無理言うなよっ」


 2年前の12月に再会を果たした私と匠刀は、2年間の遠距離恋愛を経て、この春、都内のマンションで同棲を始めた。


 私は大学院を卒業し、無事に臨床心理士の資格を取得。

 白星会医科大学に臨床心理士として正規雇用された。


 そして、匠刀もまた。

 白星会医科大学の医学部を卒業し、この春から研修医として同大学に勤務している。

 そしてそして―――。


 20分ほど前に、『そろそろ産まれそう』と虎太くんから連絡が入って、雫さんの出産を見届けるために、匠刀の車で病院へと向かっている。


「もっと早くに連絡してくれればいいのに」

「別に、出産に俺らは必要ねーだろ」

「医師の言葉とは思えないね~!」

「あ?」

「陣痛の大変さが分からないから、そんなことが言えるんだよ」

「……出産した経験があるみたいな言い方だな」

「なっ……、もういいから早く車出して!青になったから!!」

「あーはいはい」


 匠刀同様、6年間放置していたもとちゃんとも連絡を取るようになった桃子。

 これまでのことを平謝りして、仲直りした。

 というより、もとちゃんもまた、匠刀と同じように、ずっと私の帰りを待っていてくれた。


 そんなもとちゃんが一昨年結婚し、去年出産した。

 旦那さんが海外出張中ということもあって、急な産気に付き添った経験があるのだ。


「匠刀も、いつかは赤ちゃん欲しい……?」

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