第15章

第112話 変わらぬ想いとオーバーキル➀

 真っすぐと射抜かれる視線。

 彼の本心なのだと、瞳が訴えて来る。


 私がいっぱい悩んだように。

 きっと彼もたくさん悩んだはず。


 その上で、彼はちゃんと私の気持ちを汲んでくれた。


 誰かに支えられないとならない人生ではなくて。

 ゆっくりでいいから自分の足で歩くことを。


「なぁ」

「……」

「かくれんぼは、もう終わりにしないか?」

「……っ」

「俺は桃子の生き方を尊重するし、俺は俺の目指す未来に努力する」

「……」

「だけど、別々でなくてもいいだろ」

「……」

「一緒にいたってお互いの夢は叶えられるし、傍にいれば、励まし合うことだってできるだろ」

「っっっ」

「違うか?」


 昔から勘の鋭い匠刀だから、私がずっと密かに思い描いたことなんて全部お見通しで。

 1%に満たないような、その可能性を手繰り寄せるみたいにしてきた、この6年を、彼は当然とばかりに余裕の表情で手を差し伸べて来た。


 この手を。

 匠刀の手を。

 私が今掴んだら、私たちの人生は再び同じ道になるのかな。


「どうした?」

「……」

「怖いか?」

「……怖いというより、本当にいいのかな?と思って……」

「フッ、……ばーか。いいに決まってんだろ」

「んっ……」


 掴んでいいのか悩んでいたら、ぎゅっと手を握りしめられて、抱き寄せられた。


 懐かしいなぁ、匠刀の胸。

 大きくて筋肉がしっかりとしてて。

 爽やかな柑橘系に、仄かに甘い花の香りがする香水も。


 6年経った今でもあの日を思い出せるほど、何一つ変わってない。


「なぁ」

「……ん?」

「ちゅーしていい?」

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