第14章

第96話 恋人の証と一軍男子➀

 6年後の冬。


「モモっ、お願い!1回だけでいいから、ねっ?一生のお願いっ!!」

「……だから、女子の飲み会ならいいけど、合コンはダメ」

「そこを何とか!!」

「何度頼まれてもダメなものはダメ」

「えええぇぇ~~っ」


 聖泉女学院からエスカレーター式に、聖泉女子大学へと進学した桃子は、大学4年になっている。

 専攻は心理医療学科。

 学内選抜で大学院への推薦を貰い、先週無事に合格通知を手にした。

 教授の手伝いでボランティアをしながら、『臨床心理士』への道を確実に歩み進めている。


 同じ心理医療学科の友人・落合おちあい 真央まひろ(通称:まお)から合コンへの参加を拝み倒されている。

 人付き合いが苦手で、他者と関わるのが不得意だった桃子だが、匠刀と離れ、新たな人生を切り拓く一つの目標として、コミュ力向上を掲げた。

 心優しい友人たちに囲まれ、高校2年間で得た博愛精神は、桃子の心を大きく成長させた。


 6年前とは全く別人と思えるほど、明るく朗らかになった桃子。

 心理医療学科だけでなく、他学部の人からもよく合コンの誘いを受ける。

 けれど、それらの誘いを一貫して断り続けている。


「好きな人がいるのは分かってるけど、1回だけ……最初で最後にするから!!」

「……ごめんね」


『彼氏がいる』と言いたいところだが、勝手に匠刀から離れた身で『彼氏』だなんておこがましくて口にできない。

 だから、せめて……。

『好きな人がいるから』と、この6年ずーっと言い続けて来た。


 何度となく男の子を紹介されたり、合コンの誘いを受けても。

 桃子の心の中は、まだ匠刀で埋め尽くされていて、他の人が入る余地がないのだ。


「今回はオール1軍男子なんだよ~~っ」

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