第48話 心無い言葉と抉られる思い⑥

(匠刀視点)


 桃子と『学校チャレンジ』をした翌日。

 登校した俺は桃子の教室の前を通りかかると、そこに桃子の姿はなかった。

 いつも俺より早く登校している桃子。

 来る途中でも行き会わなかったし、スマホを確認しても連絡もない。

 昨日の疲れが出て、体調を崩してるんじゃないだろうか?と心配になる。


 すぐさま電話をしてみるも繋がらない。

 こういう時、本当に無力さを痛感する。

 彼氏に昇格したって、桃子の全てを把握できるわけじゃない。


「星川っ」


 後ろのドアから教室の中に入った星川を呼ぶ。

 俺の声に反応するように廊下に出て来た星川は、あからさまに視線を逸らした。


「桃子は?」

「……トイレかな」

「嘘だろ」

「……」

「お前、嘘吐けねー奴じゃん」

「っ……」

「保健室か?」

「……ううん」

「一緒には来たんだ?」

「……ん」


 毎朝、二人が駅で待ち合わせしているのは知っている。

 じゃあ、職員室にでも行ってるのか?

 脳内で一周考えを巡らせ、職員室へと迎えに行こうとした、次の瞬間。


「あ~~っ、もう!桃子、知らない女の子に呼び出されたの」

「は?」

「南棟の制服を着た子だったから、同じ普通科の子だと思うけど、玄関で拉致られて」

「おい、意味分かんねーぞ」

「だから、なんか朝から物々しい感じで、その子についてったんだよ」

「それ、何分前の話?」

「5分も経ってないと思う」

「相手は1人?」

「……うん」


 くそっ、誰だよ、その女。

 こういうのはよくあるパターン。

 男なら告白。

 女なら警告か、宣戦布告か。

 はたまたイジメか。


「次、拉致られそうになったら連絡して」

「……分かった」


 桃子以外で俺の連絡先を知ってる女子は、星川だけ。

 桃子に何かあった時用に俺の連絡先を教えてある。

 普段、やり取りすることは全くないけれど。

 こういう万が一の時のための連絡先なのに。


 怒り散らしたい感情が蠢く。

 星川に当たっても仕方ないのは分かるが、桃子の居場所が分からないだけで、気が狂いそうだ。


「あ、予鈴だ」


 星川が呟いた。

 教えてくれなくても、聞こえてるっつーの。

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