第7話 初デートはどこへ?
◇13:15
待合せの15分前に到着したものの、既に到着している怜さん。
「あらあら、15分早く到着するなんて...意外と律儀ね?」
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093082710852079
「怜さん何時に来てたの?」
「ついさっきよ」
「それで今日はどこに行くの?」
「...そうねぇ、色々考えたのだけれど...ひとまずご飯を食べに行きましょう。お昼は食べてないでしょう?」
「うん。食べてない」
「ちなみに苦手な食べ物とか苦手ジャンルとかある?」
「いや、別になんでも行けるよ」
「そう?じゃあ、私のおすすめのお店にいきましょうか」
そのまま勢いよく腕に巻きついてくる怜さん。
「ちょっ...//」
「あれ?照れてる?もしかしてエリンとはこういうのしなかった?」
「...しなかった」
「ふーん。そう?それはよかったわ」と、いやらしい笑みを浮かべる。
「...」
そのままよく分からないおしゃれなイタリアン風レストランに連れて行かれる。
「いらっしゃいませ」と、イケメンバーテンダーみたいな雰囲気の人に出迎えられる。
そうして、慣れた様子で「あそこの席いいかしら?」と、席を指定する怜さん。
そのまま案内され、席に座る。
「...なんかすごいオシャレな店なんですけど。高校生が来るような場所ではない気が...」と、小声で呟く。
「成人までそんなに時間はないのよ。こういう店の一つや二つ知っておいて損はないと思うけど?」
「...」
俺が気にしているのはおしゃれすぎることだけではない。料金的な面でも気にしているのだ。なんか大体が3000円〜って感じだけど。
やめて?俺のお財布を圧迫しないで?
「もしかして、料金のこと気にしてるのかしら?安心しなさい。今日は私の奢りよ」
「いや!そ、それは流石に...」
「じゃあ、陸が奢ってくれる?」
「...」
「冗談よ。急にセッティングしたデートだし、私は来てくれただけで嬉しいし、一緒にいれるだけで幸せなの。だからいいの」
「でも...」
「気が引けるというならその分私を楽しませることを考えることね。期待してるわよ」
「...期待...ですか」
「えぇ。期待ね」
そうして、彼女のおすすめランチを済ませると次は二人で本屋に向かった。
「本屋...。そういえば、本好きなんだもんね。好きな作者とかいる?」
「西尾維新が好きよ。彼の言い回しはすごく好き。出てくるキャラクターも魅力的で...私の大好きな作者の一人ね。そういうあなたは?」
「...作者とかはあんまりわかんないかも。というか、小説をあんまり読まないんだよなー」
「本はいいわよ。いろんな世界に連れて行ってくれるから」
「そうだね。それは同感」
そのままどうやら気になる作品があったらしく、一冊購入し、その場を後にした。
エリンとのデートととは少し違う...大人というか落ち着いているというか...。
振り回される感もなく、なんとなくお互いのスピードでゆっくりと楽しんでいる感じが心地よかった。
「さて、次はどこにいこうかしらね」
「そうだな。次は...」
そう呟いた瞬間、目の前に仲良く手を繋いでいるエリンと乃木岡が視界に入り、思わず怜さんの手を取って物陰に隠れてしまうのだった。
「...どうしたの?」
「あっ...いや...」
「?」
奥歯に何か挟まったように言い淀んでいると、「でねー?」とエリンの声が聞こえて固まってしまう。
そうして、存在を気づかれることなく通り過ぎていく二人。
「...ごめん」と、少し俯きながらそう言う。
「気にしてないわ。続きしましょう?」と、何事もないようにそのまま買い物を続けた。
しかし、怜さんはそんなことがあっても気にしないかのように、俺とのデートをただ楽しんでいた。
心の中でやっぱり少しだけ芽生えた罪悪感。
俺はこの人には相応しくないのではないか...と。
そんな最低な気持ちを抱いたまま、17:00を迎えることになった。
「そろそろ帰りましょうか」
「うん」
「今日は付き合ってくれてありがとう。また今度デートしましょうね」
「...うん」と、少しだけ無理に笑うと、怜さんは両手を使って俺の顔を抑えて、そのままゆっくりキスをした。
「!?//」
「...初めてのデートに初めてのキス。私にとってはすごく思い出に残るデートになったわ」
「...//」
「大好きよ、陸」
そういった彼女の顔は今までで一番可愛かった。
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