巨大なる変装
@stdnt
第1話
欧米人には、アジア人の顔、フェイスマスクは皆おなじに見えるのだそうだ。フェイスマスクで変装された、異国の風景。そこに盲点があった。
・・・
来日中のある大富豪の令嬢が誘拐された。身代金は一億円。父親は、娘の命も、一億円も、諦めていなかった。犯人の手がかりさえ掴めれば、あとは金にものを言わせるだけだ。
指定されたのは大宮駅ペデストリアンデッキ下だ。目印のあるタクシーが止まっている。富豪は後部座席に乗り込んだ。
乗り込むとすぐに、救援が難しいことを悟る。妨害電波のためなのか、タクシー無線は雑音しか出していなかった。そして、隣に座っていた男から伸びた腕によって、富豪は気を失った。
・・・
気を失っていたのは5分程度だったのか。運転手に起こされた。タクシーはわずかに移動しただけのようだった。見上げると、ペデストリアンデッキが見えている。が、身代金は見事に消えていた。
タクシー運転手は何も知らないようだ。残念ながら、日本語が分からない。富豪はタクシーを飛び出すと、近場の交番に駆け込んだ。交番が近くに見えていたのだ。
通報により、非常線が張られた。犯人は、まだそう遠くへは行っていないだろう。
・・・
「それにしても、よく眠るお客さんだったな。いつから眠り始めたんだろう。お友達に目的地とお代をいただいといてよかった。牛タンでも食べて、帰るかな。」
タクシー運転手はつぶやきつつ、仙台駅ペデストリアンデッキ下から車をすべり出した。
巨大なる変装 @stdnt
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