脇役にヒロインはもったいない

やすはる

1,脇役の非日常

ここは市立優生高校。

みんないつものようにすごしている


「この前隼人がさー」


彼女は本説優香

運動神経抜群、学年テストは毎回10位以内、生徒会に入っている才女

そして何よりも彼女は超がつくほどの

美女だ

健康的な体に大きい目

紫がかったツヤのある髪にゼリーみたいな唇

そして性格がとても良い


ドアが勢いよく開いた


「優香いる?」


彼は世行隼人

サッカー部に入っているやつで

運動神経抜群、友だちが多くて常に周りには誰かがいるイメージだ。

そして何よりもいいやつだ

細い体に筋肉質な体眉毛ぐらいまである前髪にちゃんとセットしてある髪

そして陽キャ


「隼人!!」


嬉しそうに頬を赤らめさせながら言った


「一緒に御飯食わない?」


「全然いいよ二人で食べよ」


大きな音でドアを閉めて廊下へ出て行った


「リア充が…」


僕?僕は影山総人

絶賛教室の端でボッチ飯さ

運動神経ボロボロ、寝癖のある髪に、猫背な姿勢

勉強なんて数学くらいしかできない

つまり陰キャだ


2人が付き合ったのは3週間前

最初の2人はすごく仲が悪ったらしい

今の2人を見れば想像はつかないが

そこから色々あって付き合ったらしい

その間は知らないが知りたくもない


けして嫉妬している訳では無いほんとに嫉妬している訳では無い

いや少しは嫉妬しているかもしれない


何だあれはまるでラノベやアニメの中の

主人公やヒロインそっくりじゃないか

僕?僕はもちろん脇役さ

脇役どころかその物語に出ているかもわからないそんないつもの日常


ある日僕はいつもどうり教室の端で過ごしていた昨日ゲームをやりすぎて眠くなってそのまま寝てしまった。授業が終わって夕方まで


ん?誰か起こしてくれないのかって?

あはは何を言っているんだい?


ゆっくり止めを覚ました。窓からは夕日が照らされて髪にツヤが入っていた。今の僕だったら何人の女の子は落とせるんじゃないかな?


後ろから話し声が聞こえた

いつも誰とも話さないせいでつい寝てるふりをしてしまった


「私たち今日で一ヶ月だね」


頬を赤らめて嬉しそうに言った

顔を見れないけれど声で本説だとわかった


「そうか、もうそんなに経ったのか

優香と一緒だと時間が経つのが早いな」


声で相手が世行だとわかった


「そんなこと言って」


顔をまた赤くして言った

ずっとラブラブして

俺がいるって知らないのか?


「実はね私一ヶ月記念でこんなの持ってきたの」


誰の人の机かわからない所においてあったバックに手を出してきれいに飾り付けされた袋を取り出した


「はい、これ」


そっぽを向いて恥ずかしそう両手で大事そう

に渡した


「え、くれるの!開けていい?」


そう言って本説さんはゆっくりとうなづいた


その袋をきれいに開けて中身を取り出した

その中身はミサンガだった

オレンジとピンクと青の色の入っているミサンガ


「それ実は私が作ってほら見て、おそろい」


頬を赤らめながら手の甲を下に向けておそろいのミサンガをつけていて見せていた


「ホントだなんかこれをつけているといつも優香がいる気がするありがと」


優しい声で優しい笑顔で言った


「そ、そうありがとよかったちょっと子供っぽいから心配だったんだよね私今から生徒会の仕事あるから行くね先帰っててバイバイ」


安心したような、美味しいものを食べた時のような顔をして教室を鼻歌を使いながらルンルンして出ていった


こんなのをずっと見てるのもなんか悪いような気分が悪いような起きて家に帰ろ


そう思って体を動かそうと思った瞬間に


「あ、もしもしあー終わったようん、うん来れる?そうそういつもの?全然いいよ」


そう言って誰のかもわからない椅子に座ってスマホを触りだした


起きるなら今だな

また体を起こして起きようとした瞬間

廊下から足音と話し声が来てつい反射で

また寝ているふりをしてしまった

我ながら何をやっているのか


「よぉ隼人終わったか」


そう笑いながら3人の男が入ってきた


確か同じサッカー部の人たちだったよな

名前なんか知らないけど


「どうだった?」


ん?なんかいつもより様子が違うぞ

なんかいつもより刺々しい感じが


「見ろよこれ」


さっきもらったきれいなミサンガをまるで

虫をつまんでるみたいに見せた


「ん?なんだこれ。ミサンガか?これ貰ったのか」


「そうなんだよ何だっけ一ヶ月記念だっけ

なんだよミサンガって子供かよこんなのを学校につけていけねぇわ恥ずかしい」


は?何を言っているんだこの男は

だって2人はカップルで仲が良くて

主人公とヒロインで物語のような関係で

相思相愛なはずだろ

なんでそんなこと


「やばー隼人こんなの聞かれたらやばいんじゃないの?」


「別に聞かれたら別れるだけだ まぁヤらせてくれるまでは別れないけどな」 


「終わったら俺にも紹介してくださいね」


「あぁあいつ俺の言うことだけは聞くからなあいつの良いところは何でも聞いてくれることと体くらいだからな」


「彼女さんがこれを聞いたらどうなるか」


「どうせいないんだからいいだろそれよりも帰るぞ見たい番組があるんだ」


「意外とかわいいな」


「うるせぇ」


そのまま楽しそうにドアを強く閉めて出ていった


周りはもう暗いこの暗さは僕の気持ちなのか

あるいは


今この教室にいるのは僕だけなのに

世界中の音が聞こえるような気がした


まぁ僕には関係のないことだし

聞かなかったことにすればいいよね

よし無視無視何も聞いてない


さっさと教室を出よ

その教室は海の中にあるように空の上にあるように全てが異常だった



「はぁ、忘れよ」



居たってことバレたら大変なことになりそう

そそくさ家に帰った


それこら何日経ったのだろうか

またいつもどうりのボッチ生活を送っていた


「あぁ、また夕方まで寝てた。あんまりこの時間まで寝ていたくないんだよな前みたいなことが起きそうで怖くてありゃしない」


そのままバッグを肩にかけて帰ろうとした時


「バン」


後ろのドアからドアが空いた


空いたドアを見向きもせず前のドアから帰ろうとした時


「お、いたいた影山くーん」


「星奈先生…」


彼女は星奈先生。理系担当の教師だ。

すごく美人なため色んな男どもが虜にされている淫乱教師だ。もちろんいいもんも持っている


「どうしたんですか…」



「いや~キミに会いたくてね」


いや先生とほとんど話したことないして言うか俺のクラスで授業なんてほとんど無いだろ


「どうしたんですか、あんまり話したことないし、面白い話なんてでき『この前教室で聞いたことについてなんだけどね』



この前のことってあの時の…何で知っているんだ…


「なんのことですか。」



「なんのことって本説と世行のことだよ。聞いてたんだろあの放課後の時。いや~面白かったねーなんで君に気が付かなかったんだろうねあいつ」


「はぁ〜」


完全にバレてるな。もうとぼけるのはムリか…


「なんでそのことを知ってるんですか。あの場面にいたんですか?」



「そりゃ教師だからなんでも知ってるよ」


なんでも…どこまで知っているんだ



「それがどうしたんですか。僕には世行にも本説にも関わりはないしなんにもしませんよ」


「そうかー。君にはこの件に足を突っ込んでほしかったんだけどな〜」


「なんで僕みたいな陰キャに話しかけるんですか」


「それはね〜。君が中学生の頃のせいかな


な…あいつなんでこのことは親もこの世のだれもしらないはずなのに


「いや~。あれは『やめてください。なんで知ってるんですか。僕に何をさせたいんですか』


「ふっ。だからいっただろう足を突っ込んで欲しいんだ」


「なんでそんなことをやらなきゃいけないんですか。」


「そんなこと言っていいのかな〜」


ちっ…やられた。完全に弱みを握られている


「そんなことをしれなんの意味があるんですか。確かに聞いているときはとてもではないがいい気分にはならなかったし、彼女に同情した。でもそれをやる理由がわからない」


「それは…」


真面目な顔をしてこっちをガン見していた


「それは?」


「私が楽しいからに決まってるじゃないか。

こんな面白いことないよ」


「は?何なんですかそれ。僕やりませんよ。面倒事に足を突っ込みたくないし、そんなにお人好しでないですから」


「は、は〜ん。じゃ、こうしよ君。えっと影山くんだっけ。私の部活入ってよ」 


「なんでそうゆうの話になるんですか。全く趣旨がわからないんですけど」


「じゃあ試しに君が入る部活をA部としよう。君は秘密がバレたくない。私は君にはいろいろなことをしてもらいたいんだ。部活の活動として。周りの面倒事を。今回は顧問の私からの依頼ってことで」


「ちょっと待ってください。なんでやること前提の話なんですか。あとこれ以外にも他にもやらなきゃいけないんですかそんなのもっとやりたくないですよ」


「ん〜。ま、今日はこれでいいかな。あとは彼女に任せて」


誰にも聞こえないくらいの小声で言った


「あ、もうこんな時間だー。早く戻らなくちゃなー。じゃ、これで」


「ちょ、ちょっと待ってください、待ってください〜」


あの先生教室出るの早すぎだろ。もうゴキブリだな。よしあの先生のことをこれからゴキブリ先生と言おう。


そのまままた肩にバッグをかけて教室を出ていった。


誰もいなくなった教室は海の底深くにあるように、山の頂上にあるように明るく、そして暗かった。








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