ネコ三郎物語

内野広宣

ネコ三郎物語

 2018年以前の作品


いつかの時代、いつかの場所、いつかの街角に、茶色の毛をしたネコがいました。そのネコの名前は、出会う人が勝手につけてくれる、ジョン、太郎、にゃん助、ねこ、コロ助、などの名前以外に、ねこ三郎という本当の名前があります。

でも人間の言葉がしゃべれないので、その時々人が呼ぶ名前で別にかまわないのでした。

ねこ三郎がいつものように、テクテク散歩していると突然後ろから目つきの悪い犬が話しかけてきました。

(俺はここ二、三日飯食っていないんだ、だから・・・・)

犬はニヤつきながらちかづいてきます。

ねこ三郎は悪い予感がして、みがまえました。

(いつたいどうしたんだい?ゴミ出しは明日だよ、明日になれば飯にありつけるさ!!きっと!!)

できるだけ明るく話しかけました。

犬は、(そうだよなぁ明日になればなぁ・・・・と)言いながらちかづいてきます。目つきの鋭さは消えません。

次の瞬間、(今日目の前にエサがあるからいいんだよ!!)

と怒鳴ると犬が飛びかかって来ました。

ねこ三郎は空中に飛び上がって犬のキバをよけると爪を

出した猫パンチを思いっきり犬の顔に叩きつけました。

犬は少しの間二三秒くらい、クラクラして周りが見えなくなりました。

(どこだ!!!逃げたって無駄だ俺のほうが足が速いんだからおいついて、食ってやる!!!)

ねこ三郎は走って逃げることを考えましたが、犬の言うとおり足では負けるのです。

ねこ三郎はとっさに、電柱によじ登りました。

必死によじ登りました命がかかっているのです。二三秒くらい、すぎて犬が周りをよく見るとねこ三郎は電柱の上の方でしがみついています。

犬は飛び上がって噛み付こうとしましたが、とどきません。ずいぶん上にいるのです。

犬は急にニコニコしだしていいました。

(どうしたんだい?さっきのはジョークさ!!今はやっているんだぜ!!本当本当!!ハハハハハハ)

ねこ三郎は、(ふざけるな!!キバ出して飛びかかるジョークがあるか!!)

犬は、(本当本当驚かせちゃった?はははっははっは、いいレストランのゴミ箱があるんだ、一緒に行こうぜ!!)

とさそいます。

でもねこ三郎は罠だと気が付きました。レストランに行こうと降りた瞬間噛み付く気でいるのです。

降りるわけにはいきません。でも腕がブルブルふるえて今にも力がぬけて下へ落ちそうです。

まずい・・・・このまま下に落ちれば確実に犬に食われてしまう。どうにかしなければ・・・・・

ねこ三郎は周りを見回しました。しかし、周りはビルばかりで飛び移れそうなところはありません。

必死に爪を立てて電柱にしがみついてても、肝心の腕の力が、今にも抜けてしまいそうです。

ねこ三郎は考えました、必死になって考えました。ただ単に落ちたら犬に食われてしまう。でも今にも腕の力が抜けてしまう。

(こうなったら・・・・)

ねこ三郎は飛び降りました。野良犬は(この時を待っていたんだ!!さっきのパンチの分返してやる)

と言うととびあがってかみついてきました。

ねこ三郎はこの時を待っていました。一度飛び上がると体を自由にうごかすことができません。

犬が跳んでくるコースを読んでねこ三郎は電柱を後ろ足で思いっきり蹴り出して、ねこ三郎は遠くへ飛び込んで犬のキバを避けました。

かなりとおくへおりた。ねこ三郎は、一目散に人間が歩いている方へ走り出しました。

犬もすぐ追いついてきます(待てこらーにがさんぞー)

(ごちそうしてくれるんじゃなかったのか!!)

(そんなのしんじていたのか!!ばかめ!!)

犬はどんどん追いついてきます。やはり犬のほうが速いのです。ねこ三郎は必死になって人間の方へ走りました。

人間が助けてくれるのかわかりません。でも、今はそれしか無いのです。

犬はもうすぐそこに迫ってきました。

ねこ三郎は後ろ姿のお婆さんに向かって(助けてくれー頼むー)と叫びながらおばあさんの股の下をくぐりました。

お婆さんが(ニャニャニャー!!)と聞こえて振り返るとそこにネコはいずに、犬がキバを出してお婆さんに向かっては走ってくるのです。

(ギャー犬がー!!)と叫ぶとお婆さんは持っていた杖で犬を叩きました。お婆さんも噛まれてはかないません。

犬は(キャイ~ン)と鳴くと走って逃げていきました。

ねこ三郎は助かったのです。そう思うと全身の力が抜けて地面にへたりこみました。

(あーびっくりした。この頃はぶっそうねー困ったものだわ)お婆さんが歩き出そうとすると目の前に猫が倒れています。

(あなたのおかげで助かったわーあなたが教えてくれたおかげで、かまれずにすんだわーありがとうね)

とお婆さんはねこ三郎を抱きかかえました。

(いや、お婆さん違うんだよ、お婆さんが俺をたすけてくれたんだよ!!)

と言ってもお婆さんには

(ニャニャニャー)としか聞こえません。

(そうかい、そうかい、助けてくれたのかい!!)

お婆さんは優しくねこ三郎をなでるのでした。

(まったくまいったぜ!!)

ねこ三郎はため息をつきました。

お婆さんはねこ三郎を自分の家へ連れ帰ることにしました。

お婆さんの家につくとねこ三郎はエサをもらいました。大好物の煮干しとシーチキンです。

(俺の好物よくわかったな!!ありがとう、お婆さん)

(にゃにゃにゃにゃニャー)都市化お婆さんには聞こえまさせん。

(そうかい、そうかい、お腹が減っていたのかい)

お婆さんは、煮干しを(バリバリバリバリボリボリボリ)

と食べているねこ三郎を優しくなでながら言いました。

(ピンポーン)玄関のベルがなって、お婆さんは玄関へ行きました。ねこ三郎はまだ(バリバリバリバリバリボリボリボリ)

と煮干しを夢中で食べています。

すると突然しっぽを掴まれました。

(いたたたたたたたーなにすんだ婆さん冗談はよしてくれよ!!)

振り返るとそこには見知らぬ子供がニコニコしています。誰かが訪ねてきたようです。どうやらお婆さんの子供と孫のようです。お婆さんも子供のお母さんも笑っています。

お婆さんは、(こら!!ダメよたろべえが痛がるでしょ!!)といいました。でも笑っています。孫が可愛いのです。お母さんも笑っています。

(おい!!こっちは本気で痛っかったんだぞ!!笑い事かよ)(ニャニャニャニャニャー)とみんなに聞こえました。

飛び上がって子供のほっぺに猫パンチをしてやろうかと思いましたがやめました。お婆さんが子どもたちが来て嬉しそうにしていたからです。お婆さんは命の恩人で、エサをくれたひとです。そのお婆さんが楽しそうにしているのです。(クソー婆さんに感謝するんだな!!本当ならお前の顔にツメアトをつけてやるところなんだぞ!!)

ねこ三郎は飛び上がりました。(ぴょんぴょんすた)(ぴょん)(ぴょん)(すた)

あっという間に食器棚の上に行くとそこでしばらく寝ることにしました。

野良犬との戦いで本当に疲れていたのです。

ねこ三郎が食器棚の上で寝ていると家族の笑い声で目が覚めました。

下を見ると家族が楽しそうに食事をしています。

(こっちは疲れているのによ!!)

ねこ三郎はぼやくとまた、眠りに付きました。でもあまり嫌な気分じゃありませんでした。こっちまでいい気分になったのです。そのいい気分のまま、ねこ三郎はぐっすり眠りました。

たっぷり眠って目が覚めると、子供と孫はもう帰っていました。しかし、おばあさんの話し声が聞こえてきます。

(誰かまた来ているのか?)でも、お婆さんの話し声しか聞こえないのです。

ねこ三郎は、食器棚の上から(ぴょん)(ぴょん)(ぴょん)とおりるとお婆さんのそばへ行きました。

(婆さんどうしたんだい?独り言かい?)

お婆さんには(ニャニャニャニャニャー)としか聞こえません。

(あら、たろべえ起きたのかい?こっちにおいで)

ねこ三郎はおばあさんの膝の上に乗って座りました。お婆さんは仏壇のおじいさんの写真に向かって話しかけました。もちろん答えは帰ってきません。お婆さんは寂しそうに話続けました。

(おじいさん、、、、、ありがたいもんだねぇ、、、、子供って、、、、もし本当の子供なら本当に良かったのに、、、、、おじいさんごねんなさいね、、、、私が産んであげられなくて)

お婆さんは泣き出しました。

ねこ三郎はびっくりしました。

(あんなに楽しそうにしてたのになんでそんなこと言うの?関係ないでしょ養子でも!!!)

(なんか関係ある?!)

(ニャニャニャニャニャーニャニャニャー)

(どうしたの、たろべえ)まだなみだがでています。

撫でようとしたおばあさんの手をはねのけてねこ三郎は

(なんか関係ある?!ねぇ関係ある!?)といいつづけました。

(どうしたのかしらねぇこのこは、、、、、、)

お婆さんは湯呑の茶を一口飲むと

(もう泣けなくなったわ、、、このこはもう、、、)

お婆さんは(あの頃は本当に今思えば楽しかったわ、、、ねぇおじいさん)

とまた仏壇のおじいさんの写真に向かって別の話をしだしました。

(良郎さんあなたと初めてあったのはどこだったかしら、、、、、)

懐かしそうに写真のおじいさんに語りだしました。

(そうバスの中だったわ、、、、)

(会ったと言うよりも、気づいたときにはもう同じ通学バスに乗っていたわね、、、、)

(はなしたことはなかったけれど、気づいたときにはあなたを視線で追っていたわ、、、)

(そして、あなたも私を視線で追っていることに気づいたの。あのとき、本当には嬉しくて友達とはしゃいだわ、、、、)

(お婆さんになった今でも昨日のことのように覚えているわ)

ねこ三郎は(こんな婆さんにも娘の頃が会ったんだな。驚きだな!?)と

(にゃん)と言いました。

(たろべえ、もう遅いから寝ましょうね)

とねこ三郎をなでました。

ねこ三郎は、(やっぱり婆さんの手だな!?)

と(にゃん)といいました。

次の日ねこ三郎がすやすや寝ていると突然お婆さんから起こされました。

(たろべえ、今日は友達の娘さんの結婚式におよばれしているの。だから、はいご飯おいとくわね)

準備をしながら、お婆さんは独り言のようにねこ三郎にはなしかけました。

(結婚、、、、。初めの頃はただただ楽しいんだから)

ねこ三郎はびっくりしました。

お婆さんがキャピキャピしながら話しているのです。

(若い娘かよ!!)

とニャンと言うと

(あらーこの話聞きたい?)

とさらに語りだすのでした。

(昔は同棲なんてできなかったわ。そんな時代だったから結婚して初めて二人だけの家に住んだわご飯を作ってあげてそれを美味しそうに食べてもらう。ただそれだけで嬉しかった、、、)

(良郎さんは、カレーライスが好きだったの、だから喜んでもらいたくて毎日のように作ったわ)

(でも毎日のように作るから良郎さんついに怒っちゃって、、、)

(でも本当に楽しい日々だったわ

お婆さんは忙しく準備していたのに、手を休めて物思いにふけるのでした。)

(おい!!婆さん!!結婚式に行くんだろ?時間大丈夫か?)とニャンと言いました。

(あらもうこんな時間!!急がなきゃ)

お婆さんは慌ててでかけました。

お婆さんが出ていって急に静かになった家の中でねこ三郎は叫びました。

(あんな婆さんにも若い頃があったんだな!!ハッハッハッハ!!若い娘みたいに話して面白いな!!)

(ちょっと!!笑い事じゃないよ!!)

突然声をかけられてねこ三郎は飛び上がりました。

しかし、振り返っても誰もいません。

(なんだ?だれかいるのか?いるなら出てこーい!!ひきょうだぞ!!)

するとまた声がしました。

(いやいや目の前にいますけれども)

湯呑茶碗の影からネズミが出てきました。

(ほおーほおーエサになりに来たのかい?)

ねこ三郎はニコッとしました。

(ちょっと!待ってくださいよーここにいるとご飯もらえてお腹いっぱいでしょう?)

(いやいや食後の運動にちょうどいいし)

またニコッとねこ三郎は笑いました。

(ちょっと待ってくださいよー居候どうしなかよくしましょう。と思って出てきたんですけれども)

必死のネズミをみながらねこ三郎は気が付きました。猫にとってネズミはごちそうです。しかし今自分はお腹いっぱいです。

これでネズミを食べたらあの憎い野良犬以下になります。あの野良犬は確かに飢えていて腹ペコだったのですから、、、。

(わかった!!マイフレンド。お腹いっぱいだからいいや。ヨロシク)

ネズミは探るような目で見ていたが急に安心して、

(そうですよね。お婆さんが気に入った猫ですもの、立派な方に違いありません。と思いますけども)

(じゃあ案内しましょう。これからここに住むんでしょうからと思いますけれども)

ねこ三郎は案内を受けることにしました。よく見てみると家はかなり古くなっています。

(ずいぶん古いなぁところで君は何って言うんだい?俺は、)

急にネズミがさえぎって

(わかっています、たろべえさんでしょう?と思いますけれど)

(違う!!ねこ三郎!!婆さんが勝手に言っているだけさ、人間と動物は言葉が通じないからぞのままにしているだけさ!!)

(そうでしたか、、、すみませんと思いますけれども)

(あの柱の傷は何?)

柱には何本も真横にメモリのように線がはいっているのです。

(ああ、あれですか気になると思っていたんですけれども)

(あれは子供さんの成長に合わせて背の高さを測ったものですけれども、それはそれは楽しそうに柱に傷をつけていましたけれども)

ねこ三郎はあれ?っと思いました。

(しかし本当の子ではないのでは?養子でしょうよ。昨日来た人だろ?)

(そうです。でも本当の子のように育てたのですそれを私は時たま壁の穴から出てみていたのですけれども)

うーんねこ三郎は考え込みました。お婆さんは本当の子じゃなくてかなしいっていっていたのに、、、、。それでも楽しかった?本当の子供のように育てた?一体どういうことだ?なぜ?

(何を考え込んでいるんですか?と思いますけれども)

(いや何でも無いさ)

そういったもののねこ三郎は考えこみました。じゃあなんで仏壇の前で婆さんは本当の子供じゃなくて悲しいって言ったんだろう?

その疑問が消えませんでした。それからも家の中をネズミに案内されてもねこ三郎はうわの空でした。

(ああそうだ!!)

急にねこ三郎は言いました。

(君誰だっけ?)

(ブーッ)とネズミは吹き出してしまいました。

(だんな、今頃ですかと思いますけれども。私チューの助でございます。)

(お婆さんがつけてくれたのでございますと思いますけれども)

(いまごろだとぉ、、、、)ねこ三郎はチューの助をわざと睨みつけました。

(ひぃーすみませんとおもいますけれども)

チューの助はびっくりしてあやまりました。それを見てねこ三郎はニヤリとして

(冗談さ)と笑いました。

(冗談きついですよと思いますけれども)

とチューの助も笑いました。

それからしばらくチューの助とお婆さんとのそれなりに楽しくてまた外の世界にはない穏やかで安心できる時間をねこ三郎は久しぶりに過ごしました。家の外にはあのノライヌみたいな奴もいるのです。

ねこ三郎とお婆さんとチューの助の穏やかな日々がしばらく続いた頃。

お婆さんとねこ三郎とチューの助は一人と二匹で散歩に出ることにしました。

(たろべえ、久しぶりの外は楽しいでしょ?)

(にゃーん)(家の中とはやっぱり空気の味が違うね)

(ちゅー)(俺っちは人間が俺っちを見たらすごい声出すから外は嫌なんですけれども。特に若い女の子)

(二人とも楽しいみたいね)

お婆さんは二匹のことを匹とわ数えず人と数えるのでした。昼間の公園は人がまばらで、ねこ三郎とチューの助にとっては楽園でした。

チューの助は人間に嫌われるのが嫌でねこ三郎は子供に追いかけられるのが嫌なのでした。

チューの助は久しぶりの外なのでひとりで木の上に登ったり葉っぱでパラシュートしたり大はしゃぎして遊んでいました。お婆さんとねこ三郎から離れて植え込みの中で歩いているとノラネコに声をかけられました。

(おいネズミさんちょっとこっちおいでよ)

チューの助は嫌な予感がして聞きました。

(なにかごようですか?と思いますけれども)

(いいから来い!!ねこがねずみにいっているんだぞ!!)

野良猫は怒っています。

(猫がネズミにとってエサだから言うこと聞けと言うことですか?と思いますけれども)

(そうだよ。俺は腹が減っているんだ!!!)

言い終わる前に野良猫が飛び上がりました。チューの助は走って逃げました。

(ねこ三郎さーん助けてとお願いしたいと思いますけれども)

チューの助は得意の木登りで逃げることにしました。

ぴゅーん、ぴゅーん、ぴゅーん、地面を走るかのように木を空に向かって走り上がります。

(バカめ!!猫も木に登れるんだぞ!!)

野良猫も木を登ってきます。でも、猫は体重が重いのでネズミより木に登るのが遅いのです。

(木登りではネズミに勝てませんね!!と思いますけれども)

(ハッハッハッハおぼるのが遅くても周りに飛び移れる木はない!!じっくり料理してやる!!)

とうとう木のてっぺんまでチューの助は上り詰めました。野良猫はもうすぐそこです。

(ねこ三郎さーんなにしているんですかー助けてくださいと思いますけれども)

(さっきからなんだ?ねこ三郎って?猫がネズミを助けるわけ無いだろう!!)

(いやあの方なら必ず助けてくれると思いますけれども)

(さっきから呼んでもこないじゃないか気づいててわざとこないんだよ)

(そんなことないです。気づかないだけです。ねこ三郎さーん助けてください、気づいてくださいと思いますけれども!!)

野良猫はガシガシガシガシ一歩づつ木を登ってきます。もうすぐチューの助にとどきそうです。

その時!!チューの助は空へ飛び上がりました。

(!!!!!)

野良猫はあまりのことにびっくりして声が出ません。チューの助は葉っぱをパラシュートにして空を飛んでいます。(猫にはこんなことできないでしょうー残念でしたーと思いますけれども)

チューの助はゆっくりゆっくり風にのって地面へとおりていきます。野良猫は悔しくてたまりません。

(地面に降りたらお前は終わりだぞー足じゃ俺が勝っているんだからなわかっているのか?悪いようにしないからこっちへ来いこっちへ来い)

チューの助は空をゆっくり飛びながら

(エサにするのに、いいも悪いもないと思いますけれども)

野良猫は急いで木を降りました爪を立てながら一歩一歩降りていきます。体重が重いからチューの助のマネはできません。地面にこの高さからおちたら、さすがの猫も怪我をします。

野良猫は悔しがりながら木を降りています。

(野良猫さーん悔しかったら空を飛んでみなさいよ。楽しいと思いますけれども)

カーッと野良猫は頭に血がのぼりました。

(エサはだまっていろ!!)と言うと手を滑らせて地面に落ちていきました。

ドスーン

猫は着地に失敗して体を打ちました。

(、、、、、、、)

野良猫は声も出ませんしばらく動かずねたままでした。本当に死んだのかな?とチューの助が思っていると

(ウォー!!許さんぞー!!)

急に猫が起き上がりチューの助に向かって走ってきます。まだチューの助は空にいます。チューの助が地面につくのを待ち伏せるつもりです。

(ほらほらもうすぐだぞ!!もうすぐ!!)

(ねこ三郎さーん助けてー!!助けてー!!と思いますけれども)

ねこ三郎は気づきました。

チューの助が葉っぱで空を飛んでいるし、下にいる猫は怒っています。全く意味がわかりません。しかし友達が助けを呼んでいる。ねこ三郎は意味もわからないまま走り出しました。

(ねこ三郎さん助けてください。この猫が俺っちを食べようとしているんですと思いますけれども)

(おい、同じ猫だろ?猫がネズミを食べるのは当たり前じゃないか!!なあ兄弟)

(俺はお前と兄弟になった覚えがない。悪いが他を当たりな。あいつは俺の友達なんだ)

(なんだと、、、、俺は腹が減っているんだ)

(俺の友達をどうしても食べると言うならばお前と戦わなくてはならない絶対にそんなことはさせない)

(おいおい、なぜネズミのために猫同士が戦わなくちゃならないんだ?エサだぞ?)

(俺の友達だ)

(、、、、、、、、)

野良猫は黙り込みました。

(頼む、友達なんだほかをあたってくれ)

ねこ三郎は頭を下げて頼みました。

野良猫は(わかったよ!!猫とネズミが友達なんか、おかしいぜ!!どうかしてるぜ!!)

と言いながら帰っていきました。

(ねこ三郎さんありがとうございましたと思いますけれども)

(いやいやいいさ)

(ところでなんで空を飛んでいたの?)

(いやー木に登ったらあの野良猫が登ってきまして、ああするしかなかったんですと思いますけれども)

(やっぱ俺たち友達なんだな俺も野良犬に追いかけられたときに似たようなことしたよ)

ねこ三郎は、野良犬との出来事やお婆さんとの出会いについてチューの助に話しました。

わっはははははっは、、、、。

二匹は大笑いしました。

公園の帰り道お婆さん、ねこ三郎、チューの助が歩いているとベビーカーを押している若い女の人とすれ違いました。女の人は気取らない普段着姿でしたがとてもハツラツとしていました。赤ちゃんはスヤスヤ寝ていました。お婆さんは若い女の人に話しかけました。

(可愛いお子さんね男の子?女の子?)

(男の子です)

(何歳になるの?)

(もう八ヶ月です)

(そう、本当にかわいいわね)

(ええ、彼も喜んでくれて嬉しいです)

しばらく話をしていましたがまた挨拶をして別れました。

(じゃあまた)

(じゃあまた)

(にゃーん)(じゃあまた)

(ちゅーん)(じゃあまた)

帰る途中お婆さんはポツリと言いました。

(彼も喜んでくれて嬉しい、、、、、なんて幸せなのかしら、、、、。)

家に帰るともう夕方でした。お婆さんには夕方の日差しが今日はなぜか少し寂しく感じられました。なぜでしょう三人で楽しく散歩していたのに、、、、、。

夕ご飯を食べ終わるとお婆さんは仏壇の前に座り、おじいさんの写真に語りはじめました。

(結婚する前二人で散歩しているとき親子連れとすれ違うとあなたはよく言っていたわね)

(子供ってかわいいなー僕と花枝の子なら絶対かわいいよね)

(あのときのあなたの笑顔が眩しくて、私も絶対あなたの子を産んで二人の子供を育てたいと思っていたわ、、、、)

(結婚して五年たっても子供ができないから二人で産婦人科に検査しにいったわね)

そしたら、私の体は子供を産めない体だとわかって、、、、。二人であれほど悲しめないと言うほどに悲しんだわね、、、、。

子供好きのあなたのために私と離婚して子供を産める人と一緒になってと言ったときあなたは本気で怒って

(ふたりでいきていこう。子供は養子を貰えばいい)

と言ってくれたわね。わたしはしあわせでした。色々会ったけどいい家族だったわね、、、、でも、、、、。

あなたという人間が生きた証が、ディエヌエーがこの世に残らなかった。私のせいで、、、、。それが悲しくて、寂しいの、、、、。

お婆さんは仏壇の前で泣き崩れてしまいました。

(にゃーん)(そお言うことか婆さん)

ねこ三郎はぴょんとお婆さんの膝の上に乗りました。

(にゃーん)(ディエヌエーが残らない、残してあげられなかった。だから悲しい人間も動物だからね)

(あら、タロベエどうしたの慰めてくれるの?)

お婆さんの手がねこ三郎をなでました。とても温かい優しい手でした。生きて感情が通った手お婆さんの人柄がにじみ出た手でした。

(でもね、タロベエ今は美知与のこと本当の子供だと思っているのよ。本当に嬉しいことよ)

そう言うとお婆さんは

(さあねましょう夜も遅いしね)

と二階に上がっていきました。

次の日の朝はとても天気が良くて雲ひとつもない青空でした。本当に雲一つ無い青空でした。

昼になってもお婆さんが起きてこないのでねこ三郎とチューの助が二階にお婆さんを起こしに行くと、お婆さんはまだ寝ていました。

(ちょっと婆さんいくら天気が良くて心地がいいからっていくらなんでも寝過ぎだよ)

ねこ三郎がお婆さんのほおをたたくと、暖かくありませんでした。

(あれ???)

(ちょっと婆さん起きてくれよ!!)

(婆さん、、、、?)

ねこ三郎の様子に驚いたチューの助がお婆さんにさわると静かに言いました。

(ねこ三郎さん、お婆さんは死んでいます)

(ちょっとばあさん!!、、、、)

ねこ三郎は泣き出しました。なぜ冷たいの?なぜ?もう温かい手でなでてくれないの?もう話せないの?なぜ?

チューの助も泣いています。

(ネズミの俺っちのこと、、、、嫌がらずに、、、、)

(あなたがいれば、私一人暮らしじゃないわね)

(と言ってくれたお婆さん、、、、あなたが、あなたが死ぬなんて、、、、)

(ねこ三郎さん美知与さんに教えてあげないといけないと思いますけれども)

(わかった、そうだな、、、、)

ねこ三郎は涙を拭うと一階へ降りていきました。

電話を置いてある棚に飛び上がるとねこ三郎は受話器を横に置いてから、お婆さんがよくかけていた番号を思い出しながら押していきました。

ぽパピポポピぽぽぷぷぷぽ

何度か間違い電話をしながらも

ピポピぽポピポピピポポプ

美知与さんの家へ電話がかかりました。

美知与は家で家事の合間に子供とあそんでいました。

美知与さんにとって大切な時間。

その時電話がなりました。

(はーい)

電話に出ると

(にゃにゃにゃにゃにゃーんにゃにゃにゃーん)

美知与さんはびっくりして電話を放り投げてしまいました。でもあれはタロベエの声じゃないかしらと思って

(タロベエ?)

と言うと

(にゃん)

と答えがありました。

美知与さんは、これは何かあったのではないか?と驚いてすぐ家を出てお婆さんの家へ向かいました。

美知与さんが玄関を勢いよく開けて飛び込んでくるとそこに、ねこ三郎がいました。

(タロベエどうしたの?)

(にゃーん)

と鳴くとねこ三郎は二階へと駆け上がりました。美知与さんと孫はその後を駆け上がりました。

布団の中で寝ているお婆さんを美知与さんが触るとお婆さんは冷たくて死んでいました。

(お母さん!!お母さん!!なんで!!なんで!!)

美知与さんは

(私本当のお母さんなんだってずっと思っていたよ、、、、これから私誰に相談すればいいの?)

美知与さんは涙を流しました。家に来るたびにねこ三郎を追いかけ回していた孫も泣いています。

(おばあーちゃん)

ねこ三郎は(にゃーん)と鳴きました。

(気持ちが通じ合っていた本当の家族だったんだなかけがえのないあなたがいなければならないと思いあえる人たち同士)

チューの助も

(本当の家族でしたよ、俺っちはずっと見ていたんですからと思いますけれども)

(チューの助俺は旅に出るよ。もともとノラネコなんだからもとに戻るよ。短い間だったけど楽しかったよ)

(ねこ三郎さん言ってしまうと思いますけれども俺っちも楽しかったと思いますけれども俺っちはもうしばらくここにのこりますさよならねこ三郎さん)

ねこ三郎は静かに玄関を出ました。

(じゃーなーチューの助!!)

(お元気でねこ三郎さん!!)

玄関を出るとすっかり日が暮れてもう夕方になっていました。

(そんなに時間がたっていたんだ。全然気が付かなかった)

車道脇の歩道を歩きブロック塀の上を歩き屋根瓦の上を歩きコンクリートのビルの上を歩きしばらくすると緑の多い道に出ました。

旅の空でねこ三郎は思うのでした。子どもたちはお婆さんが死んで本当に悲しそうに泣いた。俺が死んだときに泣いてくれる人がるだろうか?

よる草原の上で星空を見上げてやはり思うのでした。俺が死んだとき泣いてくれる人がいるだろうか?

本当に星空がきれいな夜でした。

(おれもそんな娘みつけよ!!)

そう思うねこ三郎でした。。

完結



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