しろちゃんは困り顔
冬見
第1話 しろちゃんの話
しろちゃんはいつも困り顔だった。
いつもと言っても、四六時中というわけではなくて、しろちゃんの数ある表情の中で一番印象に残っているのが困り顔だったのだ。
基本的には楽しそうなのがしろちゃんで、時に悲しみ、悔しがる。
けれど最後になって、困ったような顔になってしまうのだった。
とはいえ、そもそも美少女だったから残念ではあるものの、結局それさえも画になるのだけど。
理由を尋ねてみたら、
「まぁ、そりゃ困ってるからだよね」
と普通に返された。それはそうだ。いや、僕が聞きたかったのは何故に困っているのか、ということなんだけど。
「んー、困った顔をすれば皆んなが助けてくれるからかなぁ」
いや、どうなんだそれ。うっかりすれば性格が悪そうに見えるぞ。
僕が意見を返すと、しろちゃんは考えた挙句「まぁ、いろいろあるんだよ」と答えて、また困り顔になってしまった。ただ、その時の困り顔はしろちゃんの数多くの困り顔の中でも、大分マシな困り顔だったといえよう。
中学からクラスが一緒でよく気が合い、じゃあ彼氏彼女として付き合っているのか……というと、そうでもなく、そのまま高校まで一緒にずるずると進学してしまった。
高校一年生、予定されているであろう大学受験まではまだ余裕があり(つうか中学受験で大変だったので休ませてくれ遊ばせてくれ)、これから始まる学園生活を楽しもうと思っていたが、あいにく気の合うしろちゃんとはクラスが別々だった。
しかし、それを機に疎遠になるわけでもなく、クラスが離れてもこれまでと同じように僕としろちゃんは放課後ぷらぷらしたりなどしていた。
変わらないものもあるもんだし、成長してないんじゃね? と考えてた矢先の事だった。
しろちゃんが失踪したのである。
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