目覚めた世界はオンライン死にゲー!?特殊職業【亡骸喰い】で生き残れ
JB
第1章 『亡骸喰い』登場篇
第1話 目覚め、始まる。
暗闇のなかに白い文字が浮かび上がる。
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×××××世界に接続中です・・・
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以下の三つの選択肢から、あなたの固有職業を選択してください。
●【
●【旅の
●【
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変な夢を見ているのだろうか、それともなにか?流行りのVRゲームでもプレイしているんだっけ・・・前後の記憶がないんだが。
浮かび上がった三つの選択肢を見つめる。なんかロクなのがない・・・そもそも選択肢少なすぎるだろ!しかし夢うつつな気持ちで、おれは考えはじめた。
【旅の
残るは【
頭がまだぼんやりとしていた。変な夢を見ているのだと理解していたため、それ以上深く考えずに少年は【亡骸喰い】を選択した。
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●【亡骸喰い】でよろしいですね?
⇒はい いいえ
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まあ、いいでしょ・・・
決定したとたん、画面がフェードアウトしていく。
あれ、最初の設定はこれだけ・・・?
次の文字が浮かび上がる。
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××××世界での死によって、×××でのアナタ様は―
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なんか文字化けしているし、それは最後まで表示されないまま、ブツ。と文字は消え視界は真っ暗になった。
なんか書いてあったけど・・・やっぱ夢だよな・・・
意識もどんどんと薄れていった。
次に目を覚ましたのは、真っ白な、無音の正方形の部屋の天井。天井にはよくある電卓やエレベーターのフォントの数字が、30から29、29から28と数字を減らしていた。
黒い学ランを着て大の字になっているのは、高校二年生のイセタビト、おれだ。
状況がわからない。夢の続きか何かか、眠っている最中に何かのサプライズでゲームの世界に招待されたのか?タビトは生来の楽観的な性格からそう考えた。
いや、ほとんど何もない部屋に閉じ込められた現状、そう考えざるを得なかったというのが正しい。
ゲームだとして、こういうのは部屋のベットか王様の城とかから始まるんじゃないのかよ
そう考えてぼーっとしていてもしょうがないので、とりあえず起き上がって部屋の様子を見ることにする。
起き上がった正面側の壁には三つの扉が等間隔で並び、後ろ側には一つの扉。それ以外には何もない。壁には汚れ一つない。
先に一つの後ろの扉に近寄ってみると【戻ることは許されない】という言葉が浮かびあがっている。なんとも冷たい言葉づかいだ。
ドアノブもなにもない。押してもびくともしない。
(こっちじゃないんだな・・・)
次に三つの扉のほうに近寄る。それぞれに文字が浮かび上がっている。
左から順に
【
【
【
ここでも三つの選択肢・・・どれか一つを選ぶってことか・・・
そして選んだ先にこの名前の敵キャラクターがいるのだろう。
なんのアナウンスもないし案内役もいないまま、進んでしまうのは少し怖い。しかし。このまま何もない空間にいるのも無理だ。
三つの選択肢を見比べてみる。【人狼】【異教の祈祷師】【梟王の近衛騎士】どれを選ぶべきか。
これが何かのゲームで最初にいくつかの選択肢があるのだとしたら、それはチュートリアルみたいなもんで、どれを選んでも別に大した難易度の違いはないんじゃないか・・・?
自らの不安を振り払うように、また楽観的に考えてみる。
そうだとしても、簡単そうな相手を得らんだほうが良いにちがいないので、名前だけをみて最初の職業選択の時と同じように考えてみることにした。
【人狼】は狼男か。すばしっこく攻撃してきそうで、【異教の祈祷師】は魔法タイプっぽい、【梟王の近衛騎士】は・・・スタンダードな剣士タイプだろうけど、梟王って名前がついているのは特別感マシマシだ。なにか危険な感じがするからこれは早々になし。残りの二つで考えてみる。運動神経が特別あるわけじゃないし、足も早くない。狼人間みたいな化け物を実際に目にしてビビらない自信もないので、【人狼】もやめたほうがいいか・・・
この扉に触ればいいのかな。
【異教の祈祷師】を選ぶことにして、その扉に手を合わせようとしたとき・・・
ガタガタガタッッ
音が聞こえ突然。後ろの扉が開いた。そしていくつもの人影がぞろぞろとその先からでてきた。
その服装はまさにファンタジー世界の様相で、ここはゲームの世界なのだと感じ、少しほっとした。
しかし、彼らの様子は暗く、服装がボロボロの人物もいた。
俯いた先頭の男は、こちらに気が付いていないようで後ろに話しかける。
長髪にオールバックの戦士姿の男だ。
「何人残った?」
その問いには、すぐ後ろの背の高い眼鏡の男が答える。こちらは魔法使いのような恰好をしている。
「さっきの部屋で四人プラスだったけど八人やられた、マイナス四人。もうこの七人だけだな」
そこでようやくおれに気付き、魔法使いの男が言う。
「ここでまた、仲間の補充のようですね・・・一人しかいませんが」
戦士姿がため息をついて答える。
「一人?それに学ランで・・・新人っぽい。なんてこった」
バカにされたみたいでムッとするが、相手はこちらの顔も見ようとしない。
彼らのその後ろ、こちらも戦士姿だが、ボロボロの身なりをしている男がつぶやく。
「プラス一人で・・・次は何人やられんだ・・・?」
すぐ横にバンダナを巻いた軽装の男。
「もう無理だろ・・・こんなの・・・」
これは最悪のムードなのはわかる。思ったよりずっとハードな状況。
自分に対して説明役をしてくれる人物はだれもいない。そんな余裕はないようだ。
タビトをのけ者にして話は続く。
魔法使いの服装の男が一番後ろに声をかけた。
「とりあえず《
「はい」
僧侶か巫女?のような出で立ちのユウアと呼ばれた金髪で小柄な少女がとことこと前にでて、おれに近づいてくる。その連中で唯一の女の子だった。
「すいません、お名前だけよろしいですか?」
きれいでとてもかわいい、そんな語彙力のない感想しか出てこない。
「あ、イセタビトといいます」
「タビトさんですね、少し手を貸してください」
そういうと少女はタビトの手を握りしめて、目をつぶった。
!!?驚いた。女の子の手に触れたのは多分小学生ぶりだ・・・
そのまま、つかんだ手を額のほうにもちあげて、つぶやく。
「《
その言葉とともにタビトは自分の身体が少し光に包まれたイメージを感じた。
そして少女が顔を上げる。
「【
最初の選択肢で選んだ固有職業?が読み取られたみたいだ。それとスキル・・・特殊な能力みたいなのももっていないらしい。この世界にやってきたばかりだからなのだろう。
それにしてもこの職業のことは知らなかったらしい。最初の選択肢に【僧侶】や、単なる【戦士】もなかったし、つまりあれは完全にランダムな三つが出てきたということなのか?
リーダー格の戦士姿がそれを聞いて声を上げる。
「聞いたことねぇ・・・役に立たなそうだな」
魔法使いの男も続ける。
「不吉な名前ですし、呪い職かもしれません。それに戦闘タイプなのか、サポートタイプなのかも何とも言えませんね」
戦士が言う。
「まあいい、ユウア、次は扉のほうも頼む」
「イザキさん、わかりました」
リーダー格の戦士はイザキというらしい。
少女はおれの後ろに回って、三つの扉にそれぞれ手をかざし先ほどと同様に《読み取り》とつぶやく。先ほどまでなかった文字・情報がそれぞれ浮かび上がった。
【人狼】―コモン
【異教の祈祷師】―アンコモン
【梟王の近衛騎士】―アンコモン
コモンとアンコモン・・・これは難易度だろうか?三つとも同じじゃないんかい!【異教の祈祷師】を選びそうになっていたので、その直前に彼らがやってきてくれて助かった。
そして、職業によって得られる情報が全く違う。さっきから不平等なシステムだな・・・
戦士の男イザキが扉を見渡していう。
「よし……コモンがあるぞ。ラッキーだったな」
「人狼一択ですね、これならまだ一人もやられずにすむかもしれません」
一同に少しほっとした空気が流れたようだ。
イザキがいう。
「よし!いつも通り前衛はオレとドウマエ、ハチダの三人でいく!サポートは頼んだぞ!サカウエ、ホウジ!」
それぞれの人物が返事をする。
次に、いたのか・・・という様子でこちらを見ていう。
「ユウアとお前・・・新人はトシマの後ろについてとにかく逃げ回ってればそれでいい」
「ギリギリまで休憩したら、いくぞ」
休憩の間、おれは誰とも話すことができずに少し離れた位置で体育座りをしていた。
なんだよ・・・不親切なやつらだな
しかし、扉の先からでてきたときから、彼らはすでに満身創痍な様子で、とても話しかけやすい空気ではない。
そして、一応固まって座っている彼らも互いにそこまで親しくないのか、やはり疲れているからか、口を開くものはいなかった。
天井の数字が3から2にカウントを減らしたとき、イザキが立ちあがる。それに続いて他の彼らも立ち上がり、扉の方にむかっていった。
そこでおれも立ち上がり、少し後ろからついていく。
集まったところで、イザキが振り返り言う。
「さっき言ったことは覚えてるよな!みんな!」
全員がそれに無言でうなずく。イザキはおれのほうにも目を合わせる。真剣な表情で圧倒される。おれもほかの人と同様にそこでうなずいた。
「よし・・・行くぞ」
リーダーの男が扉に向きなおり、【人狼】の扉に触れる。
扉は緊張感もなく上にスッと上がり、白い道が続いていた。
ここでおれが絶対に行く必要があるとは思えないが、おそらく、コモンの扉は難易度がほかと比べて低いだろうし、一緒に行動する人数は多いほうがよいに決まっている。
そう考えて、タビトは一行の後方についていくことにした。すぐ横には金髪の例の少女がいる。
おれたちは扉の先に足を進めた。
おれ・イザキ・ドウマエ・ハチダ・サカウエ・ホウジ・ユウア・トシマの八人だ。
「よかったな、学ランの新人」
道を行く途中、トシマと呼ばれたガタイのいい男ー身なりはファンタジーなそれとは異なり、黒いタンクトップーが声をかけてくる。
「コモンは十人に一人、アンコモンは十人に三、四人がやられる程度らしいから、俺たちは一番イージーなところをひいたってわけだ」
少し疲れもとれたのか、自身の緊張もほぐそうと、説明役をかってでてくれているようだ。
「なるほど、確かにラッキーですね」
それでも一人やられるのか・・・とは聞けなかった。
なので別に気になったことを訊ねてみた。
「じゃあ、アンコモンより上のレベルって」
トシマの顔つきはそこで真剣になり、答える。
「ああ、レアの扉には一度だけ入ったことがあるが・・・そのとき三十人ぐらいいたけど。残ったのは、おれを含めて四人だけだった」
トシマはその時の恐怖が忘れられないようで、ガタガタと震えていた。
ゾッとした。そしておれは恐怖から肝心なことは聞けずにいた。
それは、やられるとはどういうことなのか・・・だ。
全員が【人狼】の扉の先に入った後。扉が音を立てずに閉まっていた。
その直後・・・浮かびあがっていた文字にノイズが走り、その内容が変わっていく。
【人狼】-コモン
⇒【
わけもわからずに目を覚ました世界。
イセタビトの絶望の戦いの始まりだった
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