呼ばれて呼ぶ

京極 道真  

第1話 「君だ。」脳内個人トラップ

「ほら、君。君だよ。」誰かが僕を呼ぶ。

1人でいる時に必ずおちいる。脳内個人トラップ。

通常は誰もいない。脳内が暇すぎて静かな環境の中でよく起きる現象だ。

ホラーでもなんでもない。

誰かの声。聞こえる。

文字にするとこわくないが、実際「ほら、君。君だよ。」と明確に指名されるのは見えている人間から言われるのもあまり、いい気分はしない。

対処法の逃げ道は、疲れないこと。良く食べる。良く寝る。これに限る。

脳内が疲れていると起きる現象。

ただたまに、まぎれて起きる現象がある。

「ほら、君、君だよ。」

「何?」けっして疑問形で、答えてはいけない。

  「うるさい。」

  「黙れ。」

  「きゃー!」こわがってもいい。

ただ、けっして疑問形できいてはいけない。

疑問形は会話が成立する形の言葉だ。

「何?」いってしまったら、別の次元の物体が話を「君」に続けてしまう。


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