頑張って作った物

佐坂 奈々

が、災いを招くことになるとは

今の所、ただ「なんだったんだろうなぁ」という疑問があるだけなんですが、

そんな話でも聞いてください。


私は、どこかの村に遊びに行くのが好きなんです。

適当に”○○県 西の方 村”とかで検索して、

出たところに行くっていうことをよくしてるんです。


それは私ひとりだけではなくて、

友達を誘って二人で行くんですけど。


そこで、なぜか毎回、

祠みたいなものを見るんです。


もちろん、全部違う形で、

場所も色も何もかも違うんです。

でも、なぜか”祠”というものだけはあったんです。


だから、私もちょっと祠を楽しみにしてる部分があって。

次の村はどんな祠があるのかな、みたいな。


でも、最後に行った村には祠が無かったんです。

友達と色んな所を探したんですけど、全然見つからなくて。


村長さんにも聞いたんですけど、

「この村にそういうものはありませんよ。ははは」

って。


でもどうやらその一帯で信じられてるものが無い訳では無いみたいなんですよ。


変な話ですけど、逆にモヤモヤしちゃって。

だって毎回村には祠があったから、無いと落ち着かないんです。


「だったら、私たちで祠を作ってあげようよ。」

そう言ったのは私の友達でした。

色々な祠を見てきた私たちなら、

この村にぴったりな祠を作ってあげられるかもしれないと。

今思えば、そんなことしなくてもいいのにって思うんですけど。


村長に話を通しておこうかとも思ったんですが、

どうせ断られると思って話さなかったんですよ。

それも良くなかったかもしれないですね。


その日はもう暗かったので各々家に帰ったんです。


で、それから1週間くらい経った後、

材料と工具を車の後部座席に置いて、友達の家に向かったんです。


材料?

あ、えっと、もともとDIYが趣味だったので、

必要なものはすでに揃っていたんですよ。

うん、確かそう。


いつもくらいの時間に友達の家に着いたんですけど、

インターフォン押しても出てこなくて。


だから電話かけたんです。

そしたら電話の向こうから、


「ん、ええぇ、ああ、あ、ん? やべ」


みたいな声が聞こえてきたんです。


なんだろうこれ、って少し面白がってたら、

その電話の直後に、

”ごめん寝てた まってて すぐ準備するわ”

って連絡が来たんです。


なんか友達、準備終わった後に二度寝しちゃったみたいなんですよ。

わりとすぐに家から出てきて、

ごめんごめん!とか言いながら助手席に乗ってきました。


って、別にそんな話はしなくて良くて、

ははは、私は祠の話をしたいんです。

友達が二度寝した話なんてどうでもいいんです。本当に。


2時間くらい運転して、目的地の村に到着したんです。

で、村民の誰にも見つからないようにこっそり材料や工具を持って、

あんまり人が集まらない、暗い所に行って、

そこで祠を作り始めたんです。


今思えば、事前に家で作ってから、

完成品を持っていくのが一番よかった気がするんですけど。

まあ、現地で作ればなんか、ね?

気持ちも入りやすいだろうし。いいでしょ。ね?


作ってる途中、一人知らない男性が来たんです。


『え、何それ。なんか作ってんの? というか、誰?』


「えっと、今二人でこの村の祠を作ってるんですよ。今まで巡ってきた村には祠があったから、ここにもあったほうが良いのかなって。」


『へぇ、なるほどね。手伝うか?俺、そういうの詳しいよ。』


「誰かにコッソリ言ったりしませんか?」


『いや、そういうことはしないよ。なんか面倒くさいし。』


「ならいいか。じゃあ、ちょっと手伝ってもらってもいいですか?」


『いいよ。何すればいい?』


という感じで、その男性も一緒に作ってくれる事になったんです。


その後は3人で一緒に、休憩を挟んだり、雑談したりしながら祠を作ってたんです。


それから少しあとに、暗くなってきたんです。

あぁ、もうこんな時間か。

と思って、作りかけの祠を持って車に戻ったら、そのタイミングで雨が降ってきたんです。


もう少しで祠が濡れてたかもしれないなぁ、

危なかったなぁ。と思いながら運転して家に帰ったんですけど、

その道中のことをあんまり覚えていないんです。


ここまでの話を鮮明に覚えてるのもちょっと変かもしれませんが、本当に、帰り道の事だけは何一つ覚えてないんです。


何か喋ってた気もするし、どこかに寄った気もするんですけど、それが何だったのか、どこだったのか全く出てこなくて。


ただひとつ、雨が降っていたような記憶があります。それだけです。


それから1週間後、2人とも予定が空いてたので、

また2人であの村に行きました。


祠を壊したりしないように慎重に運んで、

作業場に向かったんです。


すると道中であの男性に会って、

3人で作業を始めることにしました。


それからは何事もなく祠の製作が進んで、

もう少しで完成というところでまた雨が降ってきました。

慌てて着ている服を伸ばして、祠を守ってたんですが、ちょっとそれも厳しくなってきて。


そしたら、男性が言ったんです。


『これもうすぐ完成だから、俺がこれ仕上げとくよ。』


正直私たちも、祠を作ることが少し面倒になっていたので、

完成させてくれるならありがたいと思って、

男性に祠を任せることにしたんです。


一応完成形は見ておきたかったので、

男性とメッセージアプリを交換し、

画像を送って貰うことにしました。




しかしある日、男性からこんなメッセージが送られてきたんです。

”ごめん、ちょっと今やばいことが起きてて”

”この写真を見てほしい”


そう言った後に画像が4枚送られてきたんです。


ちょっとその画像見せられないので、メモにしてまとめてきました。こんな感じなんですけど。


■1枚目

・形容し難い化け物が、宙に浮いて口を大きく開けている

・村民たちがそこから離れようとしている様子


■2枚目

・その化け物は、私たちが作った祠から出ている

・祠は、作った時よりも少し大きくなっているように見える


■3枚目(ブレていてよく分からない)

・祠が、2枚目よりも少し小さくなっている?

・祠には、レジ袋が備えられている


■4枚目

・化け物が口を閉じて、じっとカメラの方を向いている



これ、何なんでしょうか?

私には、AIで生成したようなフェイク画像に見えるんですが、どう返事するのが正解だったんでしょうか?


送られてきた時、気味が悪くなってしまって、

男性のアカウントをブロックしてしまったんですけど、あの村は今どうなっているんでしょうかね?

████村って言うんですけど。



あれ、なんだろう。

今まさに、友達から画像が送られてきたんですけど。なんでしょうか。これは。


■1枚目(手ブレが酷く、何も分からない)


■2枚目

・小さなダンボールから、煙が出ている

・そのダンボールはものすごく小さく、何が入っているのか分からない


■3枚目(ブレていてよく分からない)

・ダンボールのアップ(どうやら、誰かに送る、もしくは誰かから届く予定だったらしい?)

・ダンボールから、木片が刺さっている?


■4枚目

・外から見た、友達の家の写真

・友達の家から白猫が出てくる



あー。そういうことなのか。やばいなこれ。


私はどうすればいいですか?


私も友達もあの男性もただ、善意で祠を作っただけなんです。


せっかく頑張って作った物が、災いを招くことになるとは思っていませんでした。


勝手に踏み込んで、勝手に作って、

そんなことをしたらバチが当たるのは当然かもしれません。


████村の方々、もし何かが起こっているようでしたら、ここで謝らせてください。現地には行きません。絶対に行きたくないんです。


本当に、申し訳ありませんでした。


さようなら。

_______________________


あれ、電話切れちゃった。なんなんだこれ。

間違い電話かな......

だいぶ長いこと、何の話してたんだか......

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頑張って作った物 佐坂 奈々 @sasakanana

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