DON’T PUSH YOUR KINDNESS

蒲生 聖

あなたの優しさを押し付けないで

 ああ、また君たちはそう言うよ

 お店にやってきたのは君たちだろうよ?

 事情も知らないでいちいち文句言うなよ。

「誰にでも体を売っているのか?」

「虚しくないの?」

「もっと自分を大切にしなよ!」

「俺だったら幸せにできるのに」

 そんな言葉を千度せんど聞いてきたんだよ、言葉だけの男どもがうるさいんだよ、目の前から消え去ってくれよ。

 それもこれも全部笑顔スマイルで返してやるよ、私の内面こころは誰にも見通せないよ。


「いらっしゃいませ〜ご主人様♡」

 しらこい顔でお客はまたやってくるよ。

「君、いつまでそんなことやってるの?恥ずかしくない?」

 この客もカスだよ。

「お仕事ですのでそう言ったことは思っていませんね〜♪」

「ふぅ〜ん。じゃあ一時間半で。」

 カスの相手をしたくないよ。でもこの道しか残されていないのよ。

 白い虫が顔に飛び交うよ。邪魔だよ消え去れよ。一方では生命の誕生の種だとか言われるが、ちっとも有難いだとか思ったことはないよ。

 今日もたった1時間のやさしさ押し付けられたよ。

 妙に札紙が温かい、自分の覚悟の温かさだ。


「あ、ぁの、、」

 今日は小さな珍しいお客さん。

「いらっしゃいませ♡ご主人様!」

「あの4時間でお願いします」

 この坊やにそんなにお金があるかしら、わからない。

 でも、好機だと感じた。

「お姉ちゃんかわいいね」

「ありがとう」

 こう言うのでいいんだよ、純粋ピュアで何もわかっていない子供ガキから向けられる視線が心地よい。

「ありがとう、また来るね。」

 残念だが少年、もうまたは訪れないさ。

 今夜限りでおしまいにするよ、何もかもよ。


 少年のおかげで、久しぶりに本性を出せた気がするよ。

 ようやく買えたコンクリートのような錠剤、まずは1人、父親を。

 2人目は常連のお兄さん。3人目はさっき来たおじさん。4人目は、、


 さぁて7人目はどこにいるかな。


 全てのおしまい、涙が溢れて水溜りになる。水面には赤色のサイレンが反射して映る。最後の一粒は自分に使おうか、コンクリートのような錠剤はすぐに小さな私の体を駆け回る。


 どうして私の腕はこんなにも細いの?

太ければお父さんに乱暴にされなかったのに

どうして私の胸はペチャっこいの?

大きければ常連さんに怒鳴られずに済んだのに

どうして私の顔は華奢なの?

いかつい顔立ちならおっさんに歯向かえたのに

どうして?どうして?


神様、神様、願わくば強い男に生まれ変わりたいです。誰からも優しさを受けないような強い強い男になりたいのです。


お願い、誰か私を救いに来て

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