第43話 承知した
岩の家の台所にて。
「「じゃあ、
「ああ。少し遅れて行く」
朝食を終えて樹海の森へ遊びに行く
「後片付けは吾輩がしておくゆえ、訓練に行ってきてよい」
「いや。マスターと一緒に後片付けをしてから行く」
「咲茉も紅茶を飲むか?」
「いや」
「そうか」
善は最後の一口もゆっくり味わってのち、カップをカップ皿に静かに置いて、咲茉を静かに見つめた。
咲茉も真っ直ぐに善を見つめて、口を開いた。
「夜のメンテナンスに私の身体に何をしているのかを答えてほしい」
朝昼晩と日に三度あるメンテナンスについて、咲茉は善に何をしているのか尋ねた事はなかった。
飛翔に必要な事だと、それだけをわかっていれば十分だったからだ。
例えば夜のメンテナンス中に自分が善に攻撃を仕掛けていると知っても、それが飛翔の為ならばと深く追究せずに口を噤んでいた。
ゆえに、咲茉は初めて、善にメンテナンスについて尋ねたのだ。
「………そなたの身体に組み込まれた兵器の一部分を吾輩の竜の力で変形させて、無効化させている。すまなかった。そなたに説明をせず勝手に手を加え、兵器を無効化して来た」
「いや。私がマスターに説明を求めなかっただけだ。マスターが謝罪する必要はない………そうか。兵器の無効化か。兵器の強力化だと思っていた」
「咲茉が望むのならば今からでも変える事は可能だ」
「いいや………いや。いい。流石はマスターだ。違和感がない。このまま。兵器の無効化を。頼みたい」
「すべて無効化するつもりはない。咲茉自身が守れるよう、少しは残しておく。いや。残さざるを得ない。吾輩でも、手を加えられない兵器があった」
「………すまない。頼む。そして、その無効化する時に、私をスリープ状態にしないでほしい。マスターの作業を見ていたい。私が身体が変わる部分を見たい」
「竜の力を使っている。外見は変わらぬ」
「そうか。だが、どちらも見たい。マスターも。私自身も」
「………吾輩が兵器に触れた瞬間、機能停止状態にあるそなたは吾輩に攻撃をしてきた」
「ああ」
「機能停止状態ではないそなた自身も、もしかしたら、吾輩に攻撃をするかもしれぬ」
「マスターには迷惑をかける」
「そなたは耐えられるか?そなた自身は元より、吾輩の残虐無比な表情に、行いに、言葉に。そなたは耐えられるか?」
「………耐えられそうになかったら、その時のデータを消去してくれ。マスター」
「クハッ………ああ。承知した」
(2024.8.30)
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