第19話 日緋色金
とても軽く、とても頑丈な、幻と謳われる緋色の金属。
善は己の炎で加工しながら無数の羽を、美しくも勇猛な翼を創造し、咲茉の身体に組み込んで、咲茉の意思で自由に身体に出し入れする事ができるようにした。
(今は飛翔だけを考えよう)
一点だけに集中すれば他の不要な事は考えずに済む。
善の特製生姜蜂蜜茶を飲まないまま朝を迎えた事にも動揺した咲茉が善に何も告げず、岩の家から一番近いドクターこと
咲茉は崖の頂に立っては空を見上げた。
現状、咲茉は飛翔できておらず、ただ、高く跳躍する事しかできていなかった。
天空に高く跳ね上がったのち、翼を体内から出して、気流に乗って飛ぶ事もできなかった。
気流を把握して乗る機能を組み込む事はできたが、咲茉は拒んだ。
善が体内に組み込んでくれた紅の両翼と、今の機能だけで飛翔する事は可能だと善に言われたからだ。
(これ以上、マスターに不甲斐ない姿を見せるわけには………違う。これも。不要な思考だ。飛翔。飛翔だけ………よし)
深呼吸をゆっくりと繰り返した咲茉は、いつものように高く跳ね上がる事はせず、崖から飛び降りたのであった。
(2024.8.24)
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