あ
外レ籤あみだ
どん底ブーツ
「ああああああああああああああああ!」
曇天にロボット男子、わヲんは激昂した。
なんという絶望!
なんという敗色!
なんという孤独!
荒野の周りは敵の人型ロボットばかり九十九体。
対してわヲん、一体。
しかし彼は褒めてほしかった。
最初は百体いたのだ。
この絶望にあって、がんばった。
その成果、一体たおしたのだ!
もはや体力の限界でありながら、一体やったのだ!
この一体は、富士山の登頂に匹敵する一体であったのだ!
「あああああああああああああ!」
わヲんまだ叫ぶ。
喜びも悲しみも爆発させて叫ぶ!
くどい!
そんなにあぁあ、叫んでなんになるのだ!
まさか『あ』の神様が降ってきて、ついでに勝利の女神まで届けてくれるとでも。
そんな甘いことがあるか!
あっていいはずがない!
世のなか甘ちょろくない!
腹痛で急いで公園のトイレへ入ったら、紙がない。
そういう絶望がそこかしこで、きっとある。
しかしそれらに悪意はない。
だからまだ命まで取られない。
だがこんかいは悪意まで連れだって、わヲん周りをそこここ囲っているのだ。
「あああああああああああああ!」
まだ叫ぶか!
もう救いなどな……。
あった!
この叫びは天に届いた。
しかも勝利の女神であった。
天を割いて、光の階が降りて、ファンファーレの鳴っているような幻聴。
そして降り立つは、なんの女神だかしらないが少女!
長い黒髪で赤い目、女神とおもえない無地のパジャマ姿。
しかしすべて美しい。
なんという希望!
なんという勝利!
なんという美貌!
というかよくみれば知り合いであった。
さて、ここで人類最初のことばがなんであっただろう。
人間が確立されたとき、猿をやめたとき、ことばのはじまったとき。
いったいどんな言葉だったのか、そこには神秘がある……。
あるが! 知らん!
しかし、わヲんは思った。
無表情で澄まして、ちっとも勝利のほほえみをしない彼女から。
いま! ここで!
わヲんだけでない、敵のロボットすらみつめていた。
なんの始まるのかと。
「あ」
はじまった。
そして終わった。
すべては一字でもって眩い光のなかへ。
なにもかも終わったのだ。
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