生温

mgkf

閉塞の夜を過ごす

ベランダに降りサンダルに足を通した途端、溜まった雨水にぬるりと足を包まれた。仕方なしに熱の残る地面に裸足で立つ。足の形をした水がじわじわ広がり、やがて薄まって消えた。

視線を上げれば蛍光灯の光が黄みがかった緑の壁を照らしている。一部だけ塗り足したような不自然な刷毛の跡に気付く。左右の頭上で唸る隣人宅の室外機と、アーチのようなデザインの緑色に切り取られた中は絵のようだった。

目の前の大木の葉は微動だにしないのに、笹のような木だけがゆらゆら踊る。小さな窓から漏れ落ちる光はまるで卵の黄身。屋根の上で薄ぼんやり白いパラボラアンテナ。かろかろ鳴る竹製の風鈴。その向こうで刹那瞬くのは車か。しかしそこで世界は終わっている。

夏の盛りだというのに妙に生温い、静止した檻に囚われているようだ。

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生温 mgkf @rjahs

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