追放系小説の主人公に転生しました。こう言うのは普通追放する側に転生しませんか?! 

長学きぷです

第1話 何でこいつなんだ?!



 日本の某県某市に住む堂成どうなる 竜彦たつひこ

 彼は今 凄い上機嫌であった。その理由は



「やっとだ……やっと食べられる。予約して3年10ヶ月23日間ずっと待って、ついにこの日を迎えた!」



 自分の部屋で机の上に置いてあるチョコレートケーキ[ディ・ウォン・ディロ]

 超人気店のケーキで、かつてゲームの世界に飛ばされて無事に帰える事が出来てから、ずっと待ち続けていた竜彦

 顔の前で両手を合わせて



「いただきます!」



 いざ、食べようとした瞬間あたり一面真っ白な空間に飛ばされた



「……んぁ?」



 目の前にかつて見たことがある男が立っていた

 自称神を名乗る中性的な顔をした男神



「やあ、また会ったね。実は、ぐべぇ?!」



 竜彦は男神の顔に右ストレートを叩き込んで殴り飛ばした



「ふざけてんのか?! こらぁぁ!! 俺はこれから3年以上待ったケーキ食うんだよ! さっさと戻せや」



「ちょ、ごはぁ?! 帰す、ぶふっ?! 今は、へばぁ?! 力が戻っ、おべばぁ!!」



 胸ぐらを掴んで立たせると、神をサンドバッグにする竜彦。 


  食べ物の恨みは恐ろしい



「ばなしぎいでぇぇ! でう!」



 神は空中に浮かびボコボコになった顔を元に戻すと



「用事が終わったら帰れるから! 同じ場所 同じ時間に帰れるからぁ! だからぁ転生をぉぉぶへ?!」



「転生って死ぬんじゃえーか! ざけんな! 俺はさっさと戻って食うんだよ!」



 飛び上がり神の足を掴むと地面に叩きつけた竜彦

 この空間に呼ばれたお陰かかつて身につけた力が戻り神をボコボコにしていた


 何度も言うが、食い物の恨みは恐ろしい



「だか、おべ?! 待っざぼぉ! ああ〜ぐぎゃ! もう、転生!」



「なっ?! てめぇ、巫山戯んな! だったらケーキも一緒によこせや!」



「あーもう、ケーキも一緒に送ってやるからしっかり働けよ! 下僕がぁ!」



 “誰が、下僕じゃー!” の断末魔? を上げて転生させられた竜彦


 ケーキも一緒に送られて食べ物の恨みは多少無くなるのだろうか……




 いつの間にか意識を失っていた竜彦は、ゆっくりと目を開ける



「……ちっ、あのクソ野郎、問答無用でやりやがったな。ここは何処だ?」



 上半身を上げて辺りを見回すと目の前に川が流れているのに気づいた。

 ゆっくりと流れる川に近づく竜彦。表面はあまり動きが無いので、鏡の代わりにはなるかと思い覗き込むと



「な……何だこれは……」



 写った顔は、血だらけになっていたが、驚いたのはそれではなく

 黒い髪に黒い瞳に中性的な顔立ち。ぱっと見て子供にも見えるが、歴とした17歳の青年



「こいつは、『無能』のヒルモ?! って事はこの世界は『無能ざまぁ』か!」



 通称『無能ざまぁ』 正式には『無能と言われて追放されました。勇者に拾われて幸せになります』と言われる追放系の小説である

 よくある追放系かと思いきや追放される原作主人公のヒルモは本当に無能である。

 一切能力もなく満足に荷物持ちも出来ず追放されて、ヒロインである女勇者、聖女、大魔導師、剣帝に拾われてヒモになって魔王討伐についていくだけの話

 普通なら直ぐに捨てられそうだが、そうならないのはヒルモの顔と優柔不断の優しさにコロッと堕ちるチョロ過ぎるチョロイン達だからである


 「ヒルモ君の為にー!」


 と、頑張る可哀想な子達。だが、勇者であるため力は本物

 ヒルモを追放するマクシミリアン・カータチスは公爵家、次男で性格以外は全てにおいて優れているが、勇者には敵わない

 追放した無能が勇者に囲われているのが気に入らず、ちょっかいをかけるが尽く追い払われ惨敗

 更には、冒険者なら普通これぐらいあるよね、っと言うことで断罪され公爵家を追放されざまぁされる

 最後に無能がハッピーエンドになるある意味胸糞悪い話で賛否両論の小説である



「……何でこいつなんだ?! 追放系って普通は追放する側に転生するもんだろー?! 嫌じゃー! んなっ?!」




 頭を抱えた瞬間、ヒルモの記憶が流れ込んでくる

 このヒルモも転生者だったこと。追放されて勇者に会うのを楽しみにダラダラ過ごして居たやばい奴とわかったこと

 そして、追放される時にマクシミリアンの周りに本来ならヒルモを拾う筈の女勇者達がマクシミリアンを囲って居て呆然としていた

 更には全員、マクシミリアンに堕とされていて、目の前で女勇者とディープキスをかまされて絶望の淵に落とされた転生ヒルモ

 絶望のまま追放されて魔物に殺されてそこに竜彦が入っちゃった



「じゃーマクシミリアンも転生者だな〜。

 ん〜ヒルモが予定より早く、くたばったから俺が入れられたのか? 

 ちっくそ面倒くせぇ、どうせマクシミリアン達が魔王倒すだろ。なら、俺はゆっくりとケーキ食べるか。能力戻ってるならマジックボックスは使えるな……っとよし……はっ? 」



 神の言う通りケーキは入っていたので取ろうとしたら


 【能力不足のために引き出せません】

 


 のウインドメッセージが目の前に表示された

 慌ててステータスパネルを開いた竜彦は



「なんだーこれは?!」



・ヒルモ(竜彦)


・LEVEL1


・HP1/10

・MP1/1


・力 1

・速 1

・守 1

・技 1

・知 1

・魔 1



「オール1?! いくら何でも弱すぎるだろ! だから無能かー! HPまで1なのはやばすぎるだろーが!……なにより」



 ステータスを見て体を震わす竜彦 



「ケーキ食えねぇじゃねえか! 何で能力がいるんだよー! あのクソ野郎がぁ!!」



 空に向かって吠える竜彦。彼の波乱万丈?な異世界生活は始まったばかりである



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