能力者に体調不良を添えて
【最近、南区の様子がおかしいんだ】
とある日の朝、依頼人さんは無線を繋げて早々にそう言います。
「おかしい、と言いますと?」
【起眞港で不審物が発見されたとの報告がで――】
「やだぁーー!!隠密のお仕事じゃないですか私絶対嫌ですーー!!」
【そんな駄々をこねた子供みたいな……】
「というか最近体調がおかしくてですねぇ……パスできませんか?」
あれは、警備バイトをした後の事でしょうか。帰ってきた後に唐突に飢餓感と吐き気が出てきたんですよね〜。まあ今は収まっているんですが。
【そうか……嘘はついていないんだよね?】
「えぇ」
【ふむ……姫。最近何かおかしなものは食べなかったかい?】
「最近食べたのは中央区と西区で買ったコンビニ弁当と……あっ」
そういえばと思い、私はそこら辺に置いていた透明な包み紙を手に取ります。
「そういえば先輩になんか不思議な味の飴を貰いましたね」
【不思議な味?】
「そうですそうです。なんか癖になるような……そうではないような?」
私の語彙力が足りないせいか、あの味を表現するには非常に曖昧になっちゃいますねぇ……。
【ふむ……まあ身体には気を付けるように】
「了解です」
――――――――――――――――――――
あれから数日後。私はかつて例の小瓶を渡してくれた戦闘員ちゃんと共に使山神社にいました。
「うぅ……気持ち悪い……」
どうも!原因不明の風邪を引いて寝袋で寝込んでいるわたっ……なんか本当に気持ち悪いですね。
「大丈夫ですか観夢様」
「大丈夫……です」
「大丈夫に見えないですね」
別に三食きっちり食べてますし、健康的な運動も九時間以上の睡眠も……多分取ってますし。ともかく普段なら風邪を引かない生活リズムなんですけどねぇ……。
「観夢様、顔を横にしてるからかよだれが垂れてます」
「……何か最近お腹の減り具合とは関係なしにお腹が空くんですよねぇ。お陰でこんなによだれが垂れて――むぐっ」
戦闘員ちゃんは私の言葉を遮り、ティッシュで顔周りのよだれを拭き取ります。優しさが身に染みますね〜!
「観夢様の症状、もしかしたら風邪ではないのかもしれませんね」
「いや、カゼカモシレナイナー。ネツモアリマスシー(棒)」
「はぁ……」
戦闘員ちゃんは涎を吹き終え、簡素なゴミ箱に捨てます。
「観夢様の今のこの状態の事、そして観夢様がそれを隠している事、
「あぁ……依頼人さんもですか」
「今のその状態をすぐに改善したいなら、真実を話した方が楽ですよ?観夢様」
例のやつ、これはバレてますねぇ。
「昔話、しておきます?」
「簡潔になら」
「分かりました。いやぁ、こういう回想シーン的なの、やってみたかったんですよね」
「早くしてください」
「はい……」
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