鏡華 丹(たみ)

とある日

境界線を隔ててる隙間に、青白い手が差し伸べられる。

わずかな隙間でもゆっくりとそっと

忙しない長い回転体が、確実に切り刻んていく

鈍足の短い回転体は、やはりゆっくりだ。

でも、確実に切り刻んでいく。


青白い手は、足から始まり、ふくらはぎ、太もも

股、お腹、胸へと、音もなく優しく撫でていく。

恐怖はない、安らぎもない、愛しささえも与えてくれない、只々撫で行くだけ。


突然、隔てる隙間から、青白さは消え

屋根を叩く歌が始まる。

最初はゆっくり、徐々に激しく、喝采は鳴り止まない。

境界線の向こう側は、ぱっと笑う一瞬一瞬思い出したかのように。

忙しない回転体が切り刻んでいくと、空間は浮遊し凪を覚え、静寂を招き入れる

先ほどまで、異常なほど叩き歌っていたから余計に。余韻はいらない。


青白い手はまたやってくる、今度は何も無い空虚を優しく撫でて行く。

鈍足の短い回転体は、旅人のように遠くへ動いていた。


位置が変わる、境界線を隔ててる隙間から

温かい手が顔をそっと撫でる。


夜明けだ。

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