夜
鏡華 丹(たみ)
とある日
境界線を隔ててる隙間に、青白い手が差し伸べられる。
わずかな隙間でもゆっくりとそっと
忙しない長い回転体が、確実に切り刻んていく
鈍足の短い回転体は、やはりゆっくりだ。
でも、確実に切り刻んでいく。
青白い手は、足から始まり、ふくらはぎ、太もも
股、お腹、胸へと、音もなく優しく撫でていく。
恐怖はない、安らぎもない、愛しささえも与えてくれない、只々撫で行くだけ。
突然、隔てる隙間から、青白さは消え
屋根を叩く歌が始まる。
最初はゆっくり、徐々に激しく、喝采は鳴り止まない。
境界線の向こう側は、ぱっと笑う一瞬一瞬思い出したかのように。
忙しない回転体が切り刻んでいくと、空間は浮遊し凪を覚え、静寂を招き入れる
先ほどまで、異常なほど叩き歌っていたから余計に。余韻はいらない。
青白い手はまたやってくる、今度は何も無い空虚を優しく撫でて行く。
鈍足の短い回転体は、旅人のように遠くへ動いていた。
位置が変わる、境界線を隔ててる隙間から
温かい手が顔をそっと撫でる。
夜明けだ。
夜 鏡華 丹(たみ) @2keykey2
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます