闇の儀式に手を出したおっさんに転生した暗殺者のおっさん。

新山田

第一話 おっさんの転生した先はおっさん


「これであいつらを見返してやるんだ!」


小さな部屋の一角で男は大きな独り言を発すると、

その目前に設置された赤い魔法陣に手をかざし呪文を唱える。


「闇よりは、高位の力を我に授けたまえ!」


魔法陣は怪しい光を帯びて、それはどんどん強くなり部屋全体の飲み込んだ。

一瞬後にすぐに暗闇が支配すると、男は体中から煙を吐き出しながら倒れた。


クロムウェル・アンバー、享年30歳であった。


────────────────────


焦げ臭い匂いに気付き目を覚ます。


朝の日差しによって照らされた部屋全体は、煙が舞い神秘的にも見える。


「どこだ、ここは?」


発した声が、覚えている自分の声とは違う、起き上がったときに重量感も、着ている服も、そして顔も。


「だれだ、これは……」


記憶を覗いてみてもこの事態になった答えは無い。

というより、


「俺は、落雷によって死んだはずでは?」


ある日の任務中に、突然天候が荒れはじめ、

暗殺には好都合だと、思った矢先におきた強烈な光と衝撃。


それで自分は絶命したはず……


だが実際には、意識があり、そして煙の充満する部屋に立っている。


「……一旦換気するか」


臭いに耐えられなったので窓を開けた。






「……なるほどな」


部屋に置いていた日記帳を発見し、一通り目を通した。


この体の持ち主は、クロムウェル・アンバー。

うだつの上がらない”冒険者”なる職業に従事していたらしい。


冒険者になってから、今までのことが毎日綴られていて、

希望を胸に抱いた時期から、目標と自分の才能の差に気付きだした頃。

そして、周りに抜かされていく焦りと、その後の冷遇と嘲笑。

その恨みと恥辱を募らせて、手を出した”闇の儀式”。


彼の人生のすべてが、ここに書き込まれていた。


内容はかなりきつい。が共感するところも多かった。特に、人の闇に触れた後から、すべての者が敵に見える、もしくは信じられなくなる。という点だ。


暗殺を生業にしていると見えてくる人の闇の深さとは違うだろうが、彼の見たモノもまた闇であるには違いない。


それを知れば、自分以外の者はすべて信じられなくなる。


日記の最後に、クロムウェル・アンバーは、

闇の儀式をへて力を得たら、自分の住む街を破壊したい、と最後に綴っていた。


さすがにこれに賛同は出来ない……だが彼の名を次の世代まで残す努力は出来る。


彼の無念を少しでも晴らせるのなら、人の闇を見たよしみとして、やってみようか。


そう思い立ち上がると、手に何かが触れる。


「なんだこれ?」


手が触れた装置は、彫刻された筋が光だしなにかを測定しているようだ。


石版表示された文字には、所持スキル一覧と書かれており、その下には、


[調教]

[死霊]

[錬金]

[精霊]

[暗黒]


5つのスペックなるモノがあった。


「これは……」


と日記のページを開き、目を通していくと、クロムウェル・アンバーが闇の儀式で手に入れたいスキルを書いていたページを見つけた。


「やっぱりアンバーが欲しがっていたスキルだな、これは」


つまりは、彼は自分の死と引き換えに、

欲しがっていたモノを手に入れたということだ。


「皮肉なもんだな」


そのページには、手に入れた時のために、

入手していた専門書があることも書いていた。


ついでにその専門書にも手を伸ばす。




読んだことをまとめると、


[調教術]は、モンスターをテイムし仲間にしたりその才能を生かすスキル

[死霊]はスケルトンの作成や、死体を活用して武器を作ったりできるスキル

[錬金]は言わずもがな、錬金台を利用して薬品を作成するスキル

[精霊]は精霊を呼び出し加護を受けたり、疑似精霊を作成したりできるスキル

[暗黒]は己の身を暗黒化したり、暗黒を呼び出したりするスキル


のようだ。ゲームのようだ、という感覚だが、

実際、本に触れる感触や周辺の匂いが現実だと知らしめてくる。


つまり、ゲーム感覚でいると足元をすくわれかねないということだ。


とりあえずスキルを把握するために使用してみようと外に出ることにした。







「……うーん」


[死霊][精霊][暗黒]を使ってみた。


専門書と言っても初級編のようでできることはそれほど多くない。


まずは[死霊]の[スケルトン作成]を使用してみた。


「スケルトン、作成」


体から冷たい感触と共に魔力が放たれ、スケルトンを作ることができた。


カタ……カタ…カタ…


いまは目の前で、草むしりをさせている。


一度命令を下すとあとは、自動で行動し続けるが、

魔力が尽きると動きを止めて消滅してしまう。さらに耐久性に問題もある。


家にあった剣で、試しに一撃入れてみるとあっさりと消滅してしまった……


魔力も、変異化した特殊なものが必要で、[冷たいエッセンス]というものらしい、それを作り出すには特殊な呪具が必要らしい。


つまりは、魔力をそのまま使用して術を発動すると、直接変換する必要があり効率が悪い。


[精霊]の専門書からは[ゴーレム作成]を覚えることができた。


土から作ったにしては、丈夫だが動きが遅い。

その上行動も逐一こちらから指示を出さないと動かない。

草をむしれを言うと足元にある草をちぎって終わる。


[暗黒]は、初級の自分の[自己暗黒化]をしてみた。

体を暗黒化することで、物理的な接触を無効化することができるようだ。


デメリットとしては、逐一魔力を消費し続けるという点だろうか。


「よしっ!」


スケルトンとゴーレムがむしった草をとりあえず部屋の中に移動させた。



続いては、錬金について調べてみよう。


[錬金]は、属性と特性を活用し錬金薬を作成するようだ。


例えば、今さっき集めたこの草からは、地属性と極小の治癒特性が抽出できる。

それを、[属性エキス]と[特性エキス]を別々の結晶液に保存する。

そしてその結晶液を掛け合わせて錬金薬は完成する。


「……出来た」


〔超極薄治癒ポーション〕を作ることができた。

さすがに手に余るくらいに雑草でやってみたがこれが精いっぱいだった。


そしてもう一つ〔魔力を帯びる土〕が出来た。これでゴーレムの質が良くなるそうだ。


さて……現状の把握はある程度できた。あとは[調教]だがこれについては現地にいって確認してみようではない、とクロムウェルのいた”冒険者ギルド”に行ってみることにした。


──────────────────────


読んでいただきありがとうございます。


この先読みたいと思っていただけましたら星★を押していただければと思います!


どうかよろしくお願いいたします!


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