大学の可愛い後輩が世話を焼きに僕の家に来てくれる

宮田弘直

久々に後輩に会いました

四月。

入学式も終わり数日、少しずつ新入生達のざわめきが未だに聞こえてくる、今日この頃。

大学二年生になった東山昴は次の講義に向けて移動中だった。


「あっ、せんぱーい! お久しぶりです!」


ざわめきの中でも良く通り聞こえてくる声。

その声には聞き覚えがあり、廊下に多くの人がいても僕に呼び掛けている事がすぐに分かった。

僕が後ろを振り返ると大きく手を振りながら近付いてくる女子の姿が目に入る。


「先輩、高校の頃から変わらないから後姿でもすぐに分かりましたよ!」


僕が高校生の時の後輩、長谷川渚が笑顔で立っていた。


「久しぶり、長谷川。そう言う長谷川は大分変わったな」


高校の頃の長谷川は僕の所属していたバスケ部でマネージャーをしてくれていて、その頃は長い髪をポニーテールにしていた。

しかし、今の長谷川の髪型は肩までのボブでウェーブが掛かっている。

高校の頃とは違い、どこか大人っぽさを感じる今の長谷川に少しソワソワしてしまう。


「大人っぽくなりました?」


「なった、なった。大学デビューってやつか?」


僕が言うと長谷川は頬をかいた。


「そう言われると少し恥ずかしいですけど、まぁ、そういう事ですね。折角なので気合いを入れてみました」


「すごく似合っているから大成功だろう。恥ずかしがる必要はないよ」


僕がそう言うと長谷川ははにかむように笑った。

そんな長谷川を見ていた時に周りに人が居ない事に気付く。


「まずい! もう講義の時間だ。行かないと」


腕時計を確認し、慌てる僕に長谷川が声を掛ける。


「あっ、先輩は今日の講義、いつ終わりますか?」


「今日は午前中には終わるな」


「良かった! 私もです。そしたら講義が終わったら連絡するので、お昼ご飯を一緒に食べませんか?」


「全然いいぞ。じゃあ、また後でな」


そう言って、互いに手を振った後、講義がある教室に向かって走り出した。



講義にはなんとか滑り込みで間に合い、その講義が終わると彼女から連絡が入った。

どうやら正門に居るらしい。

僕は教材を片付けると長谷川が待っている正門に向かった。

長谷川は僕に気付くと先程と同じ様に大きく手を振りながら近付いてきた。


「先輩、お疲れ様です」


「長谷川もお疲れ様。それで、何か食べたい物があるか? 高くなければ奢るぞ」


「良いんですか? あまりお金の余裕が無いから助かります」


「まぁ、僕もそんなに余裕があるわけではないけど、バイトしてるから」


「もう少し一人暮らしに慣れてきたら私も始めようと思っています。やっぱり、多少はお金の余裕が欲しいですからね」


「そうだな。まぁ、ゆっくりで良いと思うよ。慣れないうちは一人暮らしも大変だと思うし」


「そうですね。無理のない範囲で頑張ってみます。……あっ、あそこのファミレスはどうですか? 私、パスタが食べたいです」


そう言って長谷川が指差した場所は安くて美味しいファミレスの看板だった。


「長谷川はやっぱり気遣いが出来る良い後輩だな」


長谷川は笑いながら親指を立てる。


「高校生の頃、ズボラな先輩をサポートしてきた実績がありますからね」


「その一言は余計だぞー」


そう言って互いに笑い合うと二人でファミレスに向かうのだった。




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