雪国のクリスマスイブ
久石あまね
わかんないけど来ちゃった…
小さな雪国の田舎町の話です。
その町には二人の男女がいました。
高校生の男女です。
男の子が高3。女の子が高1。
小さい頃、二人は仲が良かったのですが、異性を意識する年齢になると、それまでと打って変わって話さなくなりました。
そして男の子が高3の頃、東京の大学試験に合格しました。
男の子は故郷を離れることになりました。
🍀🍀🍀🍀
玄関を開けたら天音がいた。
俺の目の前にいる人物、永瀬天音は俺の二つ下の高1。同じ雪国にある、県立高校に通っている。俺が小学生の頃からの幼馴染だ。天音の雪のような白い肌は無駄がなく白い。天音は夏でも白く、なぜか、とにかく日焼けしない。
俺が高3のクリスマスイブの夜、天音は急に俺の家のインターホンを押した。いきなり来たのだ。なんの前触れもなく。
玄関を恐る恐る開けると、妙に顔が赤い、白いマフラーをした天音がいた。肩までの黒髪がマフラーの上に乗っている。
「先輩…来ちゃいました」
二人の白い吐息が混ざり合う。
「急にどうしたの?」
下を向く天音。唇をすぼめる天音。
「わかんないけど、来ちゃった…」
今日はクリスマスイブだ。
つまりそういうことだろう。
「天音…、俺のこと好きなのか?」
目をぎゅっとつぶる天音。
「………」
しばらく沈黙が支配した。
天音はなぜか夜なのに制服で、その上にコートを羽織っている。スカートから見える細く白い脚が寒そうだ。
おもむろに二人の目が交錯する。
「だぃ…す…きぃ」
声にならない、天音の声色。
天音の頬を伝う透きとおった雫。
「先輩、東京に行くのでしょ?」
天音は上目遣いになる。
「そうだよ」
「なんでわたしに一言も言ってくれなかったの?東京に行くんだっら相談してよ。今までずっと一緒だったじゃない。なんで勝手に一人で決めちゃうの?」
天音はせきを切ったように思いをぶつけるように話しだした。
俺は天音の急な態度の変化に驚いた。こんなに喋るやつだったかな。
「いや、天音は高1だから、後2年こっちにいるだろ?だから東京に行くことは天音がうらやましがると思って黙っていたんだ。つまりそういうことだ。」
「そんなの詭弁ですよ。先輩鈍感過ぎますよ。クリスマスイブに後輩女子が家に来てるんですよ。どういう意味かわかってますか?気づいているでしょ」
天音はあごを上げて言った。
「わかるよ」
俺は天音を強く手前に引き寄せた。
二人はその瞬間ひとつになった。
「もう二度と離さない」
俺は天音の耳越しに、そう言って抱きしめた。
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