第3話 村の壊滅
背筋が冷える咆哮は村にも届いた。
「今の何だ!?」
間も無く飛び立ったドラゴンが森の上に姿を現した。
村に気付き、向かって来る。
「ドラゴンだ!」
「逃げろ!」
ドラゴンは急降下で着地すると、その勢いで滑りながら最初に声に気付いた村人を掬い上げるように両顎で捕らえ、丸呑みにした。
彼の断末魔を合図に、村人達は悲鳴を上げながら雲の子を散らすように逃げ出す。
ドラゴンは纏まった人数を狙って村中を走り回り、2人、3人と次々纏め食いして行った。
ドラゴンが去り暫くして、巡回の騎兵が通りかかり村の壊滅に気付き、駐屯地に報告した。
伝令がペガサスでラグモ市に急いだ。
王国首都のラグモ市は城塞都市で、政治の中枢でもある。
「何だと!?」
この報告に王は唖然として王座から立ち上がった。
王女や大臣達も同じ表情だ。
「オークどもが停戦協定を破ったに相違ない!」
「軍で報復するのだ!」
「王よ、如何されますか?」
宰相が代表して指示を仰ぐと、王は即断した。
「オークどもに思い知らせよ!」
オークの縄張りは王国東の国境に面していた。
その中の平原部分に、500名が派遣されたのである。
「王国軍が来る!」
見張りの知らせで、オークの戦士達は棍棒や戦斧を手に平原へ向かった。
両軍が国境を挟んで対峙すると、オーク軍の長が隊列の前に進み出て、
「なにゆえ軍を差し向けるのか!?」
これに王国軍の司令官が進み出る。
「襲われた村の報復だ!」
身に覚えのない罪状に、オーク軍が動揺する。
「待て!我々ではない!」
「この蛮族どもめ!」
「断じて違う!話し合おう!」
「問答無用!」
兵士達が抜剣し、弓に矢をつがえた。
オーク軍も身構えた直後、両軍の間に紫のオーラを纏うドラゴンが勢いよく着地した。
「何!?」
「ぬ!?」
ドラゴンは尻尾で司令官を弾き飛ばし、右手で長を薙ぎ払った。
「放てー!」
ドラゴンは弓兵の攻撃を受けたが首を傾げると、次の瞬間、口から紅蓮の炎を吐き出した。
扇状に広がった炎で王国軍の半数以上が引火し、王国軍はパニックに陥った。
ドラゴンは火達磨でのたうち回る兵士の1人を咥え上げ、器用に鎧だけ吐き捨てて呑み込んだ。
それから逃げ出すオーク軍を振り向くと、追跡して1人、また1人と捕食して行った。
「なんだ・・・あいつは・・・」
大木に打ち付けられ、根本にうつ伏せで倒れた司令官は、オーク軍を追って森に入って行くドラゴンを見ていたが、やがて意識を失った。
続く
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