不思議な二人
@mirei0221
不思議な二人
夏休み直前の暑い日、いつもの帰り道にクラス一の人気者の鎌倉紗奈が同じ栗色の髪をなびかせて誰も近寄りがたい雰囲気で並んで歩いている。誰もが一緒に歩きたいナンバーワンの女子、なんであいつが。噂では二人は幼馴染だとか。真相は定かではないが僕的には気分はあまりよくない。なぜかいつも、当たり前のように彼女は廉の部活終わりまで待っている。三組の三大不思議の一つと噂しているくらいだ。認めたくはないが廉も決していけてないわけではない。そこも僕の劣等感を呼び起こさせる。
いつの時から一緒に帰っている様子に気がついたか定かではないが、まるで方向違いのお互いの家なので池袋駅まで一緒なのは想像がつくが、三組の女子がたまたま池袋の駅で二人が帰るところを見かけたらしく、噂をしていた。紗奈は西武線で都下へ、廉は山手線で渋谷方面の電車に乗るらしいが、廉はわざわざ池袋駅の地上の西武線改口まで廉が彼女を送っていき、別れ際に手を軽く上げすぐ自宅へ向かう山手線方向の階段を駆け下りて行ったと、特別込み入った話をしている様子でもなく、
「なーんだ!」
と思ったとのこと。僕にはそんな爽やかな行動ができる廉がうらやましかった。
廉は確か二年の二学期にニューヨークから転校してきた。廉と紗奈の仲はクラス内では特別なことはなかった。二人ともそれぞれの友人たちと毎日を過ごしているだけに不思議である。帰りだけはいつも一緒なのだ。
夏休みが終わり再び慌ただしい学校の生活が始まる。でもクラスの中に廉の姿はなかった。担任の先生が朝のホームルーム時に、廉は彼のお父さんの仕事の関係でニューヨークに家族と一緒に戻ったと聞かされた。クラスの皆は思わず、
「こんなに急に!」
「聞いてないよ。」
とザワついていた。そんな中で僕は紗奈の方へ目を向けていた。彼女は意外にも涼しげな顔で前を向いている。
その後、先生の口から出た言葉に僕も皆も驚きを隠せなかった。それは廉と紗奈は実の兄妹で、両親が離婚していて、それぞれの家族があるため名字が違っていたこと、そして兄妹であることを秘密にしていたのは兄である廉の妹への心遣いだということだった。
のちに聞いた話では、仲良し兄妹が両親の離婚により別々に育ち、偶然にも兄が妹の通っている高校に転校してきた。学校の帰り道だけが二人で兄妹らしく過ごせる時間だったと、三組の噂好きの女子も少し涙ぐんでいた。
このことを知った日、僕はほんの少し弟がかわいく見えてしまった。
不思議な二人 @mirei0221
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます