人間の機械化

ピチャ

人間の機械化

 自分の中で恐怖と結びついているものは、感覚を向けないようにしている。

本来はとても臆病な人間だ。感受性が高く、とびきり恐怖を良く感じた。

この感情をなくしたい、そう思ったことが機械化を望む契機となった。

私たちのように給料をもらって仕事をする身には、感情はいらない。

とにかく上の言うことを訊き、下を動かす、その毎日だ。

どこに感情を挟むべき要素があるのか。

感情を入れるべき場面、要は怒り、笑いが必要とされる場面では、それを作れるようにしてある。

感情そのものの表出ではない。必要があるから後付けしているだけだ。

顧客と相対する仕事でもなし。感情を表現する役者でもなし。

最低限ビジネスで使う表情を用意してあるだけ。人間もそんなものだ。

だとしたら、機械に人間のような高度なものを求める必要がない。

不審感なく仕事ができればいいのだ。

人間より高速で、人間より正確で、人間より相手に合わせた感情が出せる。

ビジネスにおいてこれより優秀な社員がいるだろうか。

というわけで、この都市では人間の機械化が進んでいる。


 わけでもなかった。

やはりそれは人道的にどうなんだということがあり、中断されている。

それでも、せっかくの技術なので、裏で開発・実験を繰り返しているのだろうが。

その流れを知っている者は、マークされていると聞いたことがある。

当時こそ監視・尾行されるという話があり、私もそうされているのではないかと思えるようなことがあったが、今は地域社会全体がうっすらと監視されているような感じに落ち着いた。

持ち前の感情のシャットアウトで、恐怖を感じないようにしている。

たぶん、このあたりの地域の人はそうなのだろう。

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人間の機械化 ピチャ @yuhanagiya

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