日常の隙間に潜む「扉」の向こう側

田中子樹@あ・まん■長編4作品同時更新中

仏壇に頭を向けて寝た話


 学生時代、一人暮らしをしている頃にお盆で実家に帰省した時の話です。


 前日、地元の友人たちと朝まで遊んだせいで、その翌日のお盆初日、実家の仏壇のある畳間でいつの間にか寝落ちしていました。


 夢だったと思います。

 その夢の中で、私は「」を口にしました。その言葉は不思議と覚えてはいません。その言葉を発した後、私の頭の上の方から……


 「そうね~そうね~そうね~」


 と、離れたところから男性なのか女性なのかわからない声で返事をしながら、だんだんと私に近づいてきたのを感じました。


 あっ、これは怖い、逃げよう。

 そう思い、体を動かそうとしましたが、ピクリとも動きません。


 顔のすぐそば──息が届くくらいの距離まで近づいてきてそこで声の主は動かず、なぜか私は相手を見ることができませんでした。


 夢にしては妙に生々しい。夢の中であるはずなのに金縛りにあっていると客観的に自分の状況を分析できました。


 その後、意識が無くなり、気が付くと身体が動くので起き上がりました。


 まわりには家族や親戚もいて、離れたところではテレビがついており、親戚の子供たちが隣の部屋で騒いでいるのが聞こえました。


 私が頭を向けて寝ていた先には仏壇がありました。


 家族に先ほどの不思議な体験を話すと「仏壇に頭を向けて寝たからじゃない」や「寝てないよ~、横になって一分も経ってないはず」と返事がありました。


 仏壇に足を向けて寝てはいけないことは知っていましたが、頭ももしかしてダメなのか。それともそういう問題ではなく、ご先祖様が私が言った「」について「それいいね」と返事をしてくれたのか──。


 ちなみに幽霊などをこれまで一度も感じたこともなく、普段はあまり考えないようにしています。



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