ただ君に

もかの@NIT所属

幸せを

 突然のキスだった。


 でも、優しく顎を持ち上げられて、そっと噛みつくようにされたその口づけは、不思議と嫌な感じはしなかった。


 私の強張りをほどくように、丁寧な仕草で重ねられた唇に、私の緊張もだんだんと解けていった。


 ただされるがままだったその口づけは、私からも彼の唇と溶け合うように求るものになっていった。


 そうすると湧き上がってくるのは、沈み込みそうな、溺れそうな、そんな愛しさと、緩やかに胸の内を温めていく高揚感だった。


 ただ触れ合うだけだったのに、彼と1つになったと錯覚してしまいそうになるほど溶け合っているようで、もっと楽しもうとお互いに唇を啄むように動かすと、なんだかくすぐったいような気がして小さい笑い声が聞こえてきた。


 お互いに、あくまで軽いキス、という枷をかけた睦み合いだったけど、もっと彼の熱を感じたくて、自然と先に先にと、深く熱を求めるような強い結びつきになっていった。


 お互いに熱を分かち合うような口づけは初めてだというのに、とても自然な動作で唇を割って内側に潜り込んでいった。


 彼の頭に手をやりつつ、薄く目を開けると、私の視線を感じたのか彼も薄く目を開いた。


 優しく見つめてくるその視線に、彼から唇を離した私は彼に抱きつく。彼の胸に顔を埋めるようにして彼の熱を身体で感じる。


 そうすると彼も返してくれて、甘えるように私の首筋に唇を寄せている。


 少しくすぐったく感じるも、私を求めてくれてるように感じて胸が幸せでいっぱいになる。


「好き」

「俺も」

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