あの夏の日をもう一度、

@karakiwakaba123

第1話

あぁ、あの夏の日をもう一度、もう一度だけでいいから、取り戻せたのなら、君を救えたのかな、なんて、ありもしないことを考えてしまうのは僕の癖だ、まぁ、明日は休日だから、少しばかり夜更かししても怒られはしないだろう、……君が、君が消えてから何年か経ったよ、君は救われたかな、プルルル、電話がかかってきた、スマホを手に取り、応答ボタンを押す、

「もしもーし、繋がった?」

「繋がってるよ、冬歌」

「ありがとう〜、ねぇ、あの夏の日のこと、覚えてるよね、もし、繰り返せるとしたら、繰り返す?」

「繰り返す、繰り返して必ずあの子を救うんだ」

「そうだよねー、私も同意見だよ!春斗」

「良かった、」

「それじゃあ、夜も遅いから、じゃあね〜」

通話終了ボタンが押され、電話が切られる、

そういや、思いの外時間が経っていたようだ、

あの子、いや、蕪木らなかを救えるとしたならば、僕は、いや、僕らは何を犠牲にしたって構わなかった、らなかの命を犠牲にするのだけはいけなかった、流石にそろそろ寝ないとまずいな、布団を被り、兎のぬいぐるみに抱きつく、今日はいい夢見られるかな、なんて希望を抱きながら、

「私、蕪木らなかっていうのよ!よろしくね!」

「……、よろしく」

これは、夢だな、

「私は…大丈夫だから、あっちへ行ってて」

これを聞かなければ、僕らは揃って生きられたのかなんて定かではないけれど、

チュンチャンという小鳥の声が耳に響く、もう朝か、なんだか、いい夢とも言えないような夢を見ていた気がする、まぁ、いいやと思いながら、階段を降り、リビングへ向かう、

僕のお母さん、東海晴華は、いつも早起きで、大体いつ起きてもいる気がする、

「お母さん、おはよう」

と声をかけると、

「春斗!おはよう」

とお母さんも返してくれる、反対に僕のお父さんは、あんまり、早起きができないようで、いつも僕より遅く起きる、お母さんがテーブルの上に置いてくれた朝ごはん、今日はブルーベリージャムを塗った食パンとヨーグルト、昨日残ったハンバーグ、ミニトマト、みかんといちご、ぶどうだ、食パンを食べていると、お父さんが、

「おはよう、春斗」

と挨拶をする、それに対して、

「おはよう」

と返せば、お父さんは笑顔になりながら、自分の席に座った、数分もすれば食べ終わり、食器を食洗機に置いておく、そのまま、自分の部屋に行く、らなかを救いたかったという思いは心に秘めておきながら、今日の予定はなんだろうとカレンダーアプリを見る、あぁ、今日はらなか、君が消えてしまった日だったか、らなかの墓に集まろうとグループメールに、メッセージを送る、するとすぐに了解という反応が全員分届く、そういや、みんなに会うのも久しぶりだな、と思いながら、黒いスーツに身を包み、僕の誕生日に買ってくれた銀色の時計を手首に巻きつける、少しばかり髪を整えれば、完了だ、スマホと道中で花を買っていくのも忘れずに、らなかが好きだった白百合とラベンダーを買って、らなかの墓を建てた、あの寺、千界寺に行く、僕が着く頃には、冬歌、鈴音、かんと、あまか、夏斗という全員が集まっていた、かんとの字は甘いに兎って書いて甘兎、あまかの字は甘いに夏って書いて甘夏だ、

「おそいよ〜」

という冬歌の声に対し、

「ごめん」

と謝りながら、らなかの墓の側に行く、話を最初に聞かせるのは甘兎、

「俺ね、この前夜に海に行ったんだ、夜だから、街の街頭と月の光だけが頼りだった、けど、海が光に反射して、綺麗だった、この景色、らなかを含めた俺ら全員で見に行きたかったなぁ、そのあと、夜の展望台にも登ってみたよ、そこから見る星は何よりも綺麗だった、例えるなら、宝石がたくさん入ってる箱、宝石箱みたいだったな、それも、らなかを含めた俺ら全員で見たかったなぁ、、次、甘夏」

甘兎、そうだったんだ、綺麗そうな景色、僕もらなかを含めた僕ら全員で、見に行きたいな、

「OK〜、あたしね、最近、おしゃれしようかなって思ってて、らなかと居た時のツインテールのままだけど、少し巻いてみたの、らなかみたいに、ヘアアイロンで、結構難しくて、少し失敗しちゃった、あたし、不器用だからさ、あとね、アクセサリーとかも付けてみたの、ほら、これ見て、らなかと一緒にいた時に見た、海の色に似てるでしょ、あの、太陽の光を反射した、海の水色に、似てるようなネックレスにしたの、あと、これ見て、このイヤリングもらなかが付けていたやつの色違いなんだ、次、冬歌」

甘夏、アクセサリー、似合ってるよ、らなかといた時から、あまり器用ではなかったからな、難しかっただろう、ツインテールも、あまり自分でできなかった子だから、

「OK!、私ね、最近、演技を始めたの、

らなかがね、私の夢は声優さんだって教えてくれた時があったじゃん、あの夢、叶えられなかったから、私がその夢を叶えようと思って、らなかの代わりに、らなかを夢を、って思って、ずっと演技の練習してるんだけど、案外上手くいかないもんだね、いつもドジっちゃって、演技の先生に怒られちゃったよ〜、けど、絶対諦めないから、諦められないから、らなかを夢を絶対叶える義務があるから、私には、だから、見守っていてね、次、夏斗」

冬歌、昨日の電話ではそんな素振りも見せなかったのに、まぁ、それも,ある意味演技の練習ってことか?、まぁ、いいか、

「分かったでー!、うちね、生まれた時に、男に間違えられたから、この名前がつけられたらしいで、この話ししてへんかったよねー、あんな、この前な、一人でキャンプしてみてん、と言っても、道具とか、その他もろもろ、全部あちらさんで、用意してもらってんけどな、ご飯炊く道具、ライスクッカー?やっけな、とかテントとか、薪とかその他もろもろな、その時な寝る前に空を見たんよ、甘兎と同じになってまうんやけど、あの時の空はめっちゃ綺麗やって、らなかを含めたうちら全員で見たいな思ったし、キャンプもらなかを含めたうちら全員で見たいな思ったで、次、鈴音」

夏斗って男っぽい名前だな、と思っていたら、そういう秘話があったんだな、キャンプ、出来たら良いな、

「分かりました、鈴音ね、最近、といっても結構前だけど、楽器を習い始めたの、ユーフォニアムとトロンボーン、アコーディオン、だったかな?、らなかがね、好きだって言ってたさ、曲を弾きたいなって思って、アコーディオンは弾けるようになったんだけど、ユーフォニアムとトロンボーンは未だに弾けてないんだ、息と調節と、ドレミの位置が難しくてさ、けど、いずれ弾けて見せるから、その時は絶対に聞いてね、鈴音からの最後のお願いだから、、最後、春斗」

鈴音、もうアコーディオン弾けるのか?、元々器用な人だったが、成長したんだな

「僕ね、最近料理をし始めたんだ、最初は卵焼きから、ってどんどん難しい料理にもチャレンジしてみたんだ、麺類にもチャレンジしてみたんだ、けど、難しいね、料理って、らなかが作ってくれた料理の味には程遠いや、ねぇ、らなか、もう一度会えるなら、料理の秘訣を教えてね、約束だよ、そしたらその料理、らなかと僕ら全員で食べようね、これも約束だ」

全員が言い終わったあと、順々に花を置いていく、大体の人がラベンダーを置いているのを見て、やっぱりみんな考えることは同じだなと思った、あぁ、らなか、君もこれからの日常が会ったのに、急に奪われてしまった、らなか、僕らの日常には、らなかが必要だな、とひしひしと感じる、

「もう暗いから、帰らないとダメかもです」

と鈴音が言ったのを聞き、空を見ると、赤焼けになっている、みんなに別れの挨拶をし、

家に帰る、らなかにもう一度会いたいという希望という名の呪いを心に封じて、閉じ込めておく、

これは、らなかという少女が消えた夏をもう一度と願う少年少女心の話、

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