足・腕 右・左

@mia

第1話

 アラームが鳴る前に左腕のヒリヒリした痛みで目が覚めた。

 横になったまま左腕を上げて見ると、ひじの内側が血まみれになっている。血まみれは少し大袈裟だが、かきむしって血がけっこう出ている。

 赤くなったひっかき傷も何本かあり、ところどころ血がにじんでいる。

 寝ているうちに蚊に刺され痒くなってひっかいたのだと思うが、全然覚えていない。ここまで血が出ることをしたのに覚えていないことなんてあるのか? と思ったが、そういえばあった。

 去年も右足の甲がヒリヒリするので目が覚め、横になったまま右足を上げると、かきむしって甲に血が広がっていた。驚いて起き上がりよく見ると、左足の親指の爪の奥まで血がついていた。蚊に刺されて痒くなったので親指でひっかいたのだろうが、全然覚えていない。

 左腕の血を見ながら、そんなことを思い出していた。

 右手の指を見るが、血がついていない。親指、人差し指、中指、薬指、小指、と一本ずつ見るが血がついていなかった。

 夜中に手を洗いに行ったのか? それも覚えていない。起きて手を洗いに行ったのを覚えていないなんてやばいんじゃないかと思うが、覚えていないものは覚えていないので仕方ない。でも、寝ぼけていて爪の奥まで綺麗に洗えるのだろうかと疑問に思っていたが、すぐに解決した。

 左手の人差し指と中指と薬指の爪に血がついていたのだ。

 ああ、左手の指でひっかいたのか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

足・腕 右・左 @mia

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ