変わったギター
天川裕司
変わったギター
タイトル:変わったギター
うちには変わったギターがある。
と言うか霊が乗り移ったようなギターだ。
俺は昔からギターを弾きながら歌うのが好きだった。
いわゆる弾き語り。
でもギターを弾きながらとなると歌になかなか集中できず、
やっぱり歌は歌、ギターはギターで、
別々にやった方が俺の場合うまいのだ。
俺はオリジナルでいろんな曲を作ってる。
でもそれにしてもやっぱり歌とギターを別撮りでしなければ、
歌が極端に下手になってしまう。
「どうしてこんなに違うんだろう?」
ギターを弾きながら歌う時と、楽器を手にせず
歌に専念して歌う時とは、その歌声や音程がまるで違う。
つまりカラオケで歌うときの方が
俺は遥かに上手いのだ。
「くそっ!弾き語りがしたいのに」
そう思っていた時だった。
「うおっ!?な、なんだ!?」
壁に立て掛けて置いたいつも使ってるそのギターが、
ひとりでに急に鳴り始めたのだ。
何かメロディーを弾いている。
「こ、これって…」
そう、その曲は俺がつい先日作った曲。
その曲のメロディーを、俺はギターに1つも触ってないのに
ギター(そいつ)が勝手に鳴らしているのだ。
「あわわわ、も、も、もしかして、心霊現象!?」
俺は一瞬ギターから飛びのいたが、
その時また一瞬で…
「こいつが1人で勝手にメロディーを鳴らしてくれたら、俺は歌に専念できる…つまり上手く歌うことができ、それを録音すれば…」
もっと完璧な作品を動画に撮ることができる!?
そこまでを思った俺は、そのギターをずっと見つめながら
いろんな計画を練ってしまった。
そうして俺は今YouTubeで、自分の歌の録音に勤しんでいる。
それをアップして、1人でも多くの人に聴いてもらう。
その時、やっぱりギターは動画に映さない。
実はこの心霊現象に出会った直後、
俺はそのギターを持って知り合いの家へ行き、
「このギター変わってんだ!ほら見てくれ!聞いてくれ!」
みたいな調子でひとりでに鳴る
そのギターを見せようとしたところ、
どうも他人が居るとそいつは鳴らないらしい。
俺1人だけの部屋でこいつは
メロディーを奏でてくれてるようで、
人前でそのメロディーを奏でる事はなく、
俺も人前で歌に専念して歌うことができない。
「そう言うことなのか…?」
と思いついてから俺はこいつに合わせ、
自分1人の時だけにレコーディングをし、
それを動画に撮ってYouTubeにアップしていた。
だからコメント欄には、
「ギターめちゃくちゃうまいですね♪」
「なんでギター弾いてるとこ見せないんですか?」
「ギター弾きながら歌ってるところを見せろよ」
なんて賛否両論の声が鳴り響き、
俺とこいつの秘密をなんとか暴こうとする奴が多く来た。
「企業秘密だからそれはできねぇんだよ」
なんて、本当はみんなに見せたかったのだが
見せた瞬間こいつは鳴らないので、
それがどうしても出来なかったのだ。
だから今日も俺はまるで歌とギターとを別撮りの形で
YouTubeに自作の歌をアップし続けている。
果たして、このギターには何が宿ってるんだろうか?
ギターの種類はオベーションで、
本来はエレアコとして使ってなんぼのギターなのだが
それでもこの不思議な力でアンプに繋がずとも、
部屋中に鳴り響くような素晴らしい音響を奏でてくれる。
このギターを買った所に聞いてみようとも思ったのだが、
もう数年前にその店は閉店しており確かめようがない。
もしかして前にこのギターを使っていた人の霊でも
乗り移り、今こうしてその不思議な音を聞かせ続けてくれているのか?
とも思ったがそれも定かではない。
世の中にはやはり変わった事もあるもんだ。
もし他人がこの事実を知れば、
「そんな幽霊みたいなギター持って、よく怖がらないなお前??」
なんて言われそうだが、
この事実を知ってるのは俺とギター(こいつ)だけ。
だから他人の目が無いからか、
無駄に恐怖すると言う感覚がどこか鈍くなっていたのだ。
俺は今でもずっとこいつを使い、
これまでより遥かに便利になった録音と動画のアップを
心の底から感謝している。
そのうちしゃべってくれないかなぁ?
なんて少しこいつに期待しながら。
動画はこちら(^^♪
https://www.youtube.com/watch?v=q1d8YvFE6jQ
変わったギター 天川裕司 @tenkawayuji
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます